アバター★ミー 〜#スマホアプリで最高の私を手に入れる!〜
Scroll-26:運動神経100
私たちの教室は最上階にあった。
4階から3階途中の踊り場へとジャンプ、そして3階へと、階段をすっ飛ばして理科室へと駆けていく。
全身ずぶ濡れで足が滑りそうになるけど、運動神経が上がっているおかげか、すぐにバランスを立て直してくれる。そしてとうとう、理科室へと繋がる廊下の前までやってきた。
「だっ、誰だ止まれ!! この先は行ったらいかん!!」
体育教師の大塚先生だ。他にも数人の先生たちが詰めている。
「どいて!! お願い!!」
私は警告を無視し、先生たちへの元へと突っ込んでいく。そして最後は、屈んだ先生たちの上を飛び越え、その先の理科室へと向かった。
な、なにか、ドアを叩き壊せるもの……?
あった!!
私は廊下の隅っこに設置してあった消化器を取り、再び理科室へと走り出す。背中から、「そんなものじゃ消えんぞ!!」という先生の声が響いた。
***
理科室の前。廊下からも、理科室の天井が赤く染まっているのが見える。隙間からは少しずつ煙が這い出してきていた。
この中に、琴音が1人でいる——
私は無我夢中で扉に消化器を叩きつけた。
バァーンッ!! という大音響とともに、扉が吹き飛ぶ。私はすぐにかがみ込み、琴音を探した。
いた!
隅の方でグッタリとしている。
私はかがみながら、濡れた制服の裾を口に当てながら前に進む。ありがとう、おばあちゃん。あの時見せてくれた、小冊子のおかげだ——
「琴音! 琴音っ!!」
琴音は目をトロンと開けると、私を見てポツリと呟いた。
「夢なのかな……仲が良かった頃の志帆がいる……」
「バッ、バカッ!! 夢なんかじゃないっ!!」
私は琴音を担ぎ上げると、濡れた制服の胸に琴音の顔を押し当てた。琴音が悪い空気を吸わないようにだ。
私も息を止めて、理科室を飛び出す。
私がドアを叩き壊したからだろう、廊下にも煙が充満してきている。ここじゃまだ、息は出来ない。
私は無呼吸のまま、先生がいる場所まで琴音を抱え走っていく。
そして両手を広げる先生に琴音を放り投げると、私の意識はそこで途切れてしまった。
***
目が覚めると、私は病室にいた。
吊り下がっている点滴のチューブが、私の右腕に刺さっている。
ああそうか……私、琴音を助け出して……
「しっ、志帆っ!!」
隣を見ると、琴音もベッドで横になっていた。どうやら、2人は同じ病室に入れられたようだ。
「琴音、大丈夫だったんだ……本当に良かった……」
そう言った私の手を、琴音が握りしめる。
「ごっ、ごめんね……私のせいで、志帆までこんな危ない目にあって……」
琴音の顔を見ると、目がぷっくりと腫れていた。ずっと泣いていたのかもしれない。
「志帆!! 大丈夫だったか!!」
そう言ってお父さんたちが病室に入ってきた。その後ろには、琴音の両親も来ている。お父さんたちは、先生や警察の人たちと話をしていたらしい。
「志帆さん、この度は本当にうちの子がご迷惑をおかけして……」
そう言って、琴音のお父さんはその場に膝をついた。そして、頭が床に付きそうな勢いで、頭を下げだした。
「や、やめてください、白石さん! 琴音ちゃんも無事だったんですから、そんなことしないでください!!」
慌てて私のお父さんが、琴音のお父さんを抱え起こした。琴音のお父さんは、「ありがとうございます、ありがとうございます」と何度も繰り返し、私に言った。
あれ——?
何かが、おかしい……
私がアバター★ミーを使う前の姿になってるのに、誰も何も言ってこない。もしかして、私に気を使ってる……? いや、お父さんたちの態度をみる限り、そんなことは無いと思う。
そしてしばらくして、お父さんたちは家へ帰っていった。私たちに異常は見られないが、念の為1日だけ入院してくださいとのことだったからだ。
「ごめんね、志帆。大事な交換日記、燃やしちゃったりして」
「ううん。——やっぱり、私と莉奈ちゃんが話してるのを聞いて、燃やそうって思ったの?」
「莉奈ちゃん……? ああ、姫川さんのこと? いや、私もなんで日記を燃やそうと思ったのか、あまり思い出せないの。誰にも見られたくなくて、鍵を閉めたなんてことは思い出せるんだけど。——ただ憶えてるのは、志帆と過ごせなかった夏休みの間に、志帆に向けて沢山日記を書いてたってこと」
「私に向けて……?」
「そう。沢山会って、沢山話したいことがあるのに、なんで一緒にいないんだろうって。志帆が知らない間に、色々あったんだよ。ダイエットを始め——」
その時、ドアをコンコンとノックする音が聞こえた。時間はしばらくで8時。面会の最終時間、ギリギリだ。
そして病室に入ってきたのは、翔くんだった。
「大丈夫か、琴音? ——あと、ありがとう相川。死ぬかもしれないってのに、火事の中飛び込んでくれて。本当に、感謝してる……」
そう言って、翔くんは私に頭を下げた。
琴音……? 相川……?
なにか色々と、事情が変わってきているようだ。
4階から3階途中の踊り場へとジャンプ、そして3階へと、階段をすっ飛ばして理科室へと駆けていく。
全身ずぶ濡れで足が滑りそうになるけど、運動神経が上がっているおかげか、すぐにバランスを立て直してくれる。そしてとうとう、理科室へと繋がる廊下の前までやってきた。
「だっ、誰だ止まれ!! この先は行ったらいかん!!」
体育教師の大塚先生だ。他にも数人の先生たちが詰めている。
「どいて!! お願い!!」
私は警告を無視し、先生たちへの元へと突っ込んでいく。そして最後は、屈んだ先生たちの上を飛び越え、その先の理科室へと向かった。
な、なにか、ドアを叩き壊せるもの……?
あった!!
私は廊下の隅っこに設置してあった消化器を取り、再び理科室へと走り出す。背中から、「そんなものじゃ消えんぞ!!」という先生の声が響いた。
***
理科室の前。廊下からも、理科室の天井が赤く染まっているのが見える。隙間からは少しずつ煙が這い出してきていた。
この中に、琴音が1人でいる——
私は無我夢中で扉に消化器を叩きつけた。
バァーンッ!! という大音響とともに、扉が吹き飛ぶ。私はすぐにかがみ込み、琴音を探した。
いた!
隅の方でグッタリとしている。
私はかがみながら、濡れた制服の裾を口に当てながら前に進む。ありがとう、おばあちゃん。あの時見せてくれた、小冊子のおかげだ——
「琴音! 琴音っ!!」
琴音は目をトロンと開けると、私を見てポツリと呟いた。
「夢なのかな……仲が良かった頃の志帆がいる……」
「バッ、バカッ!! 夢なんかじゃないっ!!」
私は琴音を担ぎ上げると、濡れた制服の胸に琴音の顔を押し当てた。琴音が悪い空気を吸わないようにだ。
私も息を止めて、理科室を飛び出す。
私がドアを叩き壊したからだろう、廊下にも煙が充満してきている。ここじゃまだ、息は出来ない。
私は無呼吸のまま、先生がいる場所まで琴音を抱え走っていく。
そして両手を広げる先生に琴音を放り投げると、私の意識はそこで途切れてしまった。
***
目が覚めると、私は病室にいた。
吊り下がっている点滴のチューブが、私の右腕に刺さっている。
ああそうか……私、琴音を助け出して……
「しっ、志帆っ!!」
隣を見ると、琴音もベッドで横になっていた。どうやら、2人は同じ病室に入れられたようだ。
「琴音、大丈夫だったんだ……本当に良かった……」
そう言った私の手を、琴音が握りしめる。
「ごっ、ごめんね……私のせいで、志帆までこんな危ない目にあって……」
琴音の顔を見ると、目がぷっくりと腫れていた。ずっと泣いていたのかもしれない。
「志帆!! 大丈夫だったか!!」
そう言ってお父さんたちが病室に入ってきた。その後ろには、琴音の両親も来ている。お父さんたちは、先生や警察の人たちと話をしていたらしい。
「志帆さん、この度は本当にうちの子がご迷惑をおかけして……」
そう言って、琴音のお父さんはその場に膝をついた。そして、頭が床に付きそうな勢いで、頭を下げだした。
「や、やめてください、白石さん! 琴音ちゃんも無事だったんですから、そんなことしないでください!!」
慌てて私のお父さんが、琴音のお父さんを抱え起こした。琴音のお父さんは、「ありがとうございます、ありがとうございます」と何度も繰り返し、私に言った。
あれ——?
何かが、おかしい……
私がアバター★ミーを使う前の姿になってるのに、誰も何も言ってこない。もしかして、私に気を使ってる……? いや、お父さんたちの態度をみる限り、そんなことは無いと思う。
そしてしばらくして、お父さんたちは家へ帰っていった。私たちに異常は見られないが、念の為1日だけ入院してくださいとのことだったからだ。
「ごめんね、志帆。大事な交換日記、燃やしちゃったりして」
「ううん。——やっぱり、私と莉奈ちゃんが話してるのを聞いて、燃やそうって思ったの?」
「莉奈ちゃん……? ああ、姫川さんのこと? いや、私もなんで日記を燃やそうと思ったのか、あまり思い出せないの。誰にも見られたくなくて、鍵を閉めたなんてことは思い出せるんだけど。——ただ憶えてるのは、志帆と過ごせなかった夏休みの間に、志帆に向けて沢山日記を書いてたってこと」
「私に向けて……?」
「そう。沢山会って、沢山話したいことがあるのに、なんで一緒にいないんだろうって。志帆が知らない間に、色々あったんだよ。ダイエットを始め——」
その時、ドアをコンコンとノックする音が聞こえた。時間はしばらくで8時。面会の最終時間、ギリギリだ。
そして病室に入ってきたのは、翔くんだった。
「大丈夫か、琴音? ——あと、ありがとう相川。死ぬかもしれないってのに、火事の中飛び込んでくれて。本当に、感謝してる……」
そう言って、翔くんは私に頭を下げた。
琴音……? 相川……?
なにか色々と、事情が変わってきているようだ。