永遠の約束を交わそう

彼女の涙

勇side



昨夜の光景が、脳裏から消えない。


月明かりの浜辺に座り込み、肩を震わせて泣いていた美緒。


あの時、声をかけようと足を踏み出しかけて…


結局、立ち尽くすしかなかった。


なぜ声をかけられなかったのか。


理由は分かっていた。


もし近づいてしまえば、彼女の涙に触れてしまえば、自分の覚悟が揺らぐ。


慰めたいとか、泣かせたくないという、兵士には許されない思いに縋ってしまいそうで。


だから、砂を踏む音を殺して踵を返したのだ。

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