永遠の約束を交わそう

未来に託した想い

彼らが旅立った夜の静かな浜辺。


兵舎の方からは微かに虫の声が響き、時折、遠くの空で飛行機のエンジン音がかすかに聞こえる。


「美緒ちゃん、今いいかしら」


私はキクさんに呼ばれて救護所に戻る。

 
「これ…神谷さんから預かっていたの。あなたに渡してほしいって」

 
少し黄ばんだ封筒を手渡されると、キクさんはにっこり笑って、言葉を添える。
 

「急がなくてもいいわよ。ゆっくり読んでごらんなさい」

 
私は救護所の外にあるベンチで封を切った。


その手が少し震えた。
 

紙を取り出すと、淡く匂うインクとわずかに湿った感触が、胸の奥をぎゅっと締めつける。


これは、2人で過ごした記憶そのものを形にしたものだ、と直感でわかった。

 
ゆっくりと文字を追う。
 
 
 
 
 
< 65 / 83 >

この作品をシェア

pagetop