もう恋なんてしないはずだったのに〜御曹司課長の一途な愛に包まれて〜
***  
オンラインの一部始終を黙って見ていた。
普段は控えめで、地味にすら見える彼女が堂々と英語を話す姿。しかも、誇らしげに胸を張るわけでもなく、静かに結果だけを差し出す。今までの姿からは想像もできなかったが、まるで彼女の中の蕾が水を得て、ふと花開く瞬間のようで一瞬目が釘付けになった。
「……あんな顔もするんだな」と心の中でつぶやき、ふと笑みが漏れそうになる。
会議で流れるように英語を話す彼女は今は椅子に腰掛けまるで何事もなかったようにパソコンを開いている。でもその肩が微かに震えていることに気がついた。
思わず近づき、先ほどのお礼を言いながら様子を伺うと俺の一言で急に涙を溢していて驚いた。一体彼女に何があったのだろうか。目立つのを嫌う彼女が溢した涙。ここで何かアクションをして困るのは彼女だろう。俺は見ぬふりをして席に戻ったが、彼女の涙が妙に頭から離れなくなってしまった。
周囲に褒められ、自分の努力が認められたのになぜ涙ぐむ?
俺の中で彼女という存在がなぜか気になって仕方なくなっている。
推し活をし楽しむ彼女、黒のスーツを見に纏い地味で目立たずコツコツと作業する彼女、チャーミングな一面の彼女、そしてなぜか褒められたことに涙を流す彼女。
ただの部下だったはずが、もっと知りたい、そんな気持ちにさせられ目が離せなくなっていく自分を自覚し始めていた。
< 20 / 96 >

この作品をシェア

pagetop