もう恋なんてしないはずだったのに〜御曹司課長の一途な愛に包まれて〜
「意外だな……そんな趣味、あるんだ」

軽くからかうように言ったその言葉に日菜の胸が一気に冷え、笑顔が固まる。

「てっきり真面目一筋なのかと思っていたよ。可愛いところもあるんだな」

ばったりでくわし驚いたようでつぶやいていた。でも私の様子をみて、

「あ……ごめん。ばかにした訳じゃない。気に障ったのなら……」

課長は慌てたように表情を変えた。

「……っ、失礼します!」

鞄を抱え込むようにして、逃げるようにその場を去った。顔が熱い。足が震える。どうして、よりによって課長に――。
私を呼び止める声が聞こえるが、一目散にその場を離れた。

そんな私の後ろ姿を見て課長は小さく息を吐いていた。職場では決して見せないそんな表情に少し驚いてしまっただけで彼女があれほど動揺するとは思わなかった。ほんの一言で、壁を厚くしてしまったのかもしれない。そう気づいた時には、もう遅かった。そんなことを課長が思っていたなんて私は知るよしもなかった。
< 6 / 96 >

この作品をシェア

pagetop