もう恋なんてしないはずだったのに〜御曹司課長の一途な愛に包まれて〜
「真紘さん、自分で買いますから」

「いいんだ。俺が日菜に着て欲しかったんだから」

彼の私を甘やかす言葉に翻弄される。仕事の時とあまりに違いすぎて動揺してしまう。

「俺が選んだ服を着てくれたらと思うと嬉しいんだ」

そう言ってまた髪にキスを落とす。身長差がある分、彼がこうやって私の髪に触れるたび心臓が跳ね上がる。
彼に褒められるたびに私の心がどんどん満たされていくのが分かる。傷つき、自分の殻に閉じこもっていた私を優しく外に連れ出してくれた。真新しいワンピースに心の中まで新しくなったような気がした。
真紘さんは優しすぎる。でもその優しさに私の手の中で収まるほど狭くなっていた世界からあっという間に連れ出してしまった。
もうあの世界に戻りたいと思えないくらい、真紘さんのとなりは居心地が良い。私の手を引いて色々な世界を見せてくれる。

「ありがとう」

言いたい言葉はたくさんあるのに、うまく伝えられない。
でも反対に私は彼に何がしてあげられるのだろうと、幸せすぎる故に心配になる。
皓介と付き合って、してあげることばかりでしてもらうなんてなくなっていたから余計にしてもらってばかりで少し落ち着かない。

「私に何かできることありますか?」

思わずそう口にしていた。すると彼は少し驚きつつ、「もう充分だよ」と返してくれた。
充分って……、私何もしていない。
いつも彼に任せてばかり、今日もこんな素敵なところに連れてきてもらった。彼は私の話を聞いてくれ、欲しい言葉もくれる。反対に私がしてあげたことなんてひとつもない。そう思っていると、彼は歩きながら話始める。
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