もう恋なんてしないはずだったのに〜御曹司課長の一途な愛に包まれて〜
そういえば発表のあった日はショックを受けて帰宅したんだ。やっぱり私とは違う世界の人だって思って。でも、それでも、彼が好きだと自覚してしまい戸惑っていたのを思い出す。
あの日退社時間に私を待ち伏せしていた彼は私と話したいと言った。あの時の気持ちを聞いて私の胸は熱くなる。

「どうしてもあの日に話さなければと待っていたんだ。日菜の顔を見たらこのままだとどんどん日菜に距離を置かれてしまうと思った。自分は変わらないと伝えたかった。それに本当に大切に思うものは自分で取りに行かなければと改めて自覚した」

「でも、私なんか……」

「私なんか、じゃない。俺にとって本気で欲しかった女なんだから」

その言葉に心が震え、私の目から涙がこぼれ落ちた。それに気が付いた彼は親指でそっと私の涙を拭ってくれる。
こんなに幸せでいいのだろうか。

「日菜が俺のそばにいてくれることが俺の幸せだから、何かして欲しいなんて本当にないんだ」

甘い視線を送られ、私の胸は高鳴りっぱなしだ。付き合っていると私は自分を差し出してばかりで楽しいより努力が多かったように思う
。してあげることが当たり前でしてもらうことに慣れていなかった。でも真紘さんは違う。そばにいてくれるだけでいいと言ってくれる。私がそばにいるだけで幸せと言ってくれる。

「ひかるくんみたい……」

「ははは…俺がもうそばにいるから大丈夫だよ」

思わず口にしてしまったひかるくんの名前。すぐに彼は気が付いたようで笑ってくれる。そしてひかるくんの言葉を彼が言う。

「でも俺のほうが日菜を好きだからあいつより上だ」

そんなふうに話してくれる彼の顔に少し笑ってしまう。あぁ、彼を好きになってよかった。こんなに胸が熱くなる気持ちをまた持つことができて本当に幸せだ。

「私も好き」

小さな声で言うと、彼の耳にも届いたようだ。そして顔を上げさせられるとさっとキスをしてきた。周囲に見られたら、と思うと恥ずかしいが、彼は何もなかったかのに自然だ。動揺しているのは私だけ見たいでなんだか悔しい。私は彼のニットにぎゅっと抱きついた。そして驚いた顔の彼に爪先でようやく触れる位置までくるとさっと掠めた。
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