もう恋なんてしないはずだったのに〜御曹司課長の一途な愛に包まれて〜
数日後、仕事が終わらずひとりで残業をしていた。電気の消えた静かなオフィスでカタカタとキーボードを打つ音だけが響く。
「まだいたのか?」
振り返ると課長が立っていた。
「か、課長……、まだいらしたんですか」
すっかりもう私しか残っていないものだと思っていたが、課長は別の部屋にいたようだった。
「あぁ。資料の整理をしていたら遅くなってな。君もか?」
「はい。もう細かく確認をしていたら終わらなくなってしまって」
その瞬間目が合った。息の詰まるような気まずさが一瞬にして広がった。そして、その空気をはじめに割ったのは課長だった。
「この前は悪かった」
短くそう告げると頭を下げてきた。
「もういいんです。気にしないでください」
この前のこと、とはきっとカフェの話だろうと何も言わなくてもわかった。でもそう伝える私の声はどこかいつもより低く、自分でも冷たく感じた。
あの時のことを思い出す。両手いっぱいのグッズを抱えて笑っていた自分。それをまた思い出させられてしまった。もう忘れて欲しい。思い出さないで欲しい。
課長は頭を上げるとどうしたものかといつもよりも少し困っているように見えた。でも私はこれ以上彼に伝えることはない。またパソコンに視線を戻すと資料を見ていた。
課長はしばらくその場に立ち尽くしていたが、そのうち私の資料を覗き込み始めアドバイスをし始めた。
効率的日常進める方法や上にどう説明をすれば通りやすいかを実際にパソコンを動かしながら説明してくれた。なんで急に?と思っていたが、わかり言いやすい説明に聞き入ってしまう。それに今まさにつまづいていたところを分かりやすく説明してくれ、思った以上に確認作業が早く片付いた。
「ありがとうございます。助かりました」
隣に並ぶ課長に小さく頭を下げると彼はふっと微笑んでいた。
「花菱さんの仕事は丁寧だな。いつも助かっている」
まさか褒めてもらえるなんて思っても見なかった。でも課長の見たことのないその表情に胸の奥がざわついた。
「もう遅いし、何か食べて帰るか?」
何気なくかけられた言葉に驚いてしまう。今まで課長とこんな会話は一度だってしたことはなかったから。きっと課長は気を使ってくれたのだろう。
「いえ。大丈夫です。それでは失礼します」
エントランスで課長に挨拶すると私は一目散に駅へと足を進めた。
「まだいたのか?」
振り返ると課長が立っていた。
「か、課長……、まだいらしたんですか」
すっかりもう私しか残っていないものだと思っていたが、課長は別の部屋にいたようだった。
「あぁ。資料の整理をしていたら遅くなってな。君もか?」
「はい。もう細かく確認をしていたら終わらなくなってしまって」
その瞬間目が合った。息の詰まるような気まずさが一瞬にして広がった。そして、その空気をはじめに割ったのは課長だった。
「この前は悪かった」
短くそう告げると頭を下げてきた。
「もういいんです。気にしないでください」
この前のこと、とはきっとカフェの話だろうと何も言わなくてもわかった。でもそう伝える私の声はどこかいつもより低く、自分でも冷たく感じた。
あの時のことを思い出す。両手いっぱいのグッズを抱えて笑っていた自分。それをまた思い出させられてしまった。もう忘れて欲しい。思い出さないで欲しい。
課長は頭を上げるとどうしたものかといつもよりも少し困っているように見えた。でも私はこれ以上彼に伝えることはない。またパソコンに視線を戻すと資料を見ていた。
課長はしばらくその場に立ち尽くしていたが、そのうち私の資料を覗き込み始めアドバイスをし始めた。
効率的日常進める方法や上にどう説明をすれば通りやすいかを実際にパソコンを動かしながら説明してくれた。なんで急に?と思っていたが、わかり言いやすい説明に聞き入ってしまう。それに今まさにつまづいていたところを分かりやすく説明してくれ、思った以上に確認作業が早く片付いた。
「ありがとうございます。助かりました」
隣に並ぶ課長に小さく頭を下げると彼はふっと微笑んでいた。
「花菱さんの仕事は丁寧だな。いつも助かっている」
まさか褒めてもらえるなんて思っても見なかった。でも課長の見たことのないその表情に胸の奥がざわついた。
「もう遅いし、何か食べて帰るか?」
何気なくかけられた言葉に驚いてしまう。今まで課長とこんな会話は一度だってしたことはなかったから。きっと課長は気を使ってくれたのだろう。
「いえ。大丈夫です。それでは失礼します」
エントランスで課長に挨拶すると私は一目散に駅へと足を進めた。