もう恋なんてしないはずだったのに〜御曹司課長の一途な愛に包まれて〜
日菜をおろそかにしすぎてしまったからなのだろうか。
今まで日菜は真面目で地味なイメージがあり、部署のみんなと仲は良くてもどこか一歩引いているようなところがあった。でも松木さんと話す姿は今までの日菜とは違ってとても楽しそうにしていた。その笑顔を見てハッとした。最近こんな彼女の笑顔をいつ見ただろうか。
確かにやり取りは欠かさずに取っているし、時間が合えば俺のマンションで一緒に過ごす時もある。だが、こんな笑顔になっていただろうか。あのはにかむような表情を最後に見たのはいつだったか覚えていない。彼女がうちに来てくれ、食事を作って一緒に過ごすのが常になり、出かけたり外食をするのもしていなかったと思い出す。
彼女が結婚式に着て行く服を見に行くと言って一緒に選びに行ったが、そのあとは疲れている俺を心配してマンションに帰ってきてしまった。
そういえば1番仲のいい友人の結婚式だと話していた。その話もろくに聞いてあげていない。いつからの友人なのか、どれだけ仲がいいのか、どこで結婚式をするのか……。最近の忙しさに彼女の話を少しも聞いていなかったのだと気付いた。むしろ一緒にいて何を話したのかさえも覚えていない自分の愚かさに頭を殴られたようだ。まるで彼女は俺の食事を作りにくるだけのようになっていたのではないか。彼女だって毎日仕事をしているのに週末になると俺の世話をして何が楽しいんだろうか。むしろ嫌になっても仕方ないのではないか。考えれば考えるほど自分の至らなさが思い浮かんでくる。
日菜をどうしても手に入れたくて、決死の覚悟で彼女に告白をした。上司としてのプライドも捨て、ひとりの男として彼女に振り向いて欲しかったから。それなのに付き合えた途端、彼女をおろそかにするなんて見捨てられても仕方ないのかもしれない。おろそかにしたつもりはなくても、そう思われても仕方のない行動をとっていたのかもしれない。
まだ間に合うだろうか。
彼女を取り戻せるだろうか。
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