わたし、お妃様にはなりません!?
後宮にて
「虹、見違えたわよ。すごいじゃない。あなたのほうがお姫様みたい」
ぼさぼさの髪は海風が櫛で髪をとかしてあげた。
「そ、そんなことないですよ。あたしはどんなお仕事をすればいいですか?」
後宮では家来が身の回りのお世話をするのだそうだ。その仕事を頼んでみよう。
「虹はわたしの身の回りのお世話をすればいいから。わからないことは先輩の海風に聞いてちょうだい。海風は都の役人に負けないくらい優秀だから、いろいろ教えてもらえるわ」
「わかりました! 頑張ります! そして、あたしは一生詩花様にお使いします」
都のお城に着いた。でっかい壁に囲まれていて、強そうな兵隊が門の前で槍を持っていた。
「詩花姫さま、遠いところをよくおいでくださいました。これで後宮には30人のお姫様が揃いました。陛下もお喜びになるでしょう」
わたしが二人の召使いを連れてお城の廊下を進むと、クスクスと笑い声が聞こえた。
「あら、田舎者の詩の県の姫が来たわ」
声の主は紫色の着物を着ていた。紫色はとても高貴な色で貴族の中でもごく一部の人が身につけている。
「わたくしは火の県の火仙(かせん)。まあ、あんたなんかに負けないだろうけれど、お妃様の座は諦めなさい」
「あ、あの。あたしは召使いなのですが」
虹が戸惑っている。虹のほうをお姫様だと思ったみたいだ。
「な……」
火仙は恥をかかされたと思ったみたいだ。
「お、おぼえてらっしゃいっ!」
そのやりとりを見ていた青年がくすりと笑った。よく見ると、先ほど街中で会った役人だった。
「僕の名前は仁(じん)っていうんだ。後宮や街の警備をしている。火仙さまには困っていたら、少し助かったよ。他の姫様へもケンカ腰で性格がきついんだ。でも後宮一の美人で勉強も芸も一位」
なるほど。後宮は女の子ばかりで競争意識も高い。みんなお妃様になりたいから美しさと勉強や芸などを磨くことに忙しいと聞いている。
「詩花さま、こちらへついてきて」
仁についていくとお城の中にいくつもの屋敷が建っていた。お姫様と召使いが暮らすには十分な広さだ。
「詩花さまは一番最後に来たから一番すみっこの屋敷だ。でも屋敷の広さはどれも同じだから安心して」
そう言うと、仁は屋敷の入り口で立ち止まった。
「あれ? 中には入らないの?」
「王様以外の男がお姫様の屋敷の中に入ったら罰があるんだよ。お姫様はみんな王様のお妃様候補だからね」
なるほど、王様の妻になるかもしれないのだから当たり前といえば当たり前だ。
それにしても、わたしが妃になるつもりはないとして、他のお姫様と仲良くなれるのか心配だな。みんなと仲が悪いのはやっぱり嫌だし。出来れば友達の一人くらい作りたい。
「ねぇ、仁。お姫様同士で友達になったりすることあるの?」
「うーん、教養のある人たちだから喧嘩したりはしないけれど……友達になるのは難しいかもな。やっぱりライバル同士だから」
「そうなんだ。時間はあるし、友達を一人でもつくれるようにゆっくり頑張ってみるよ」
「そうだな。困ったことがあったら俺に言ってくれ。じゃあな」
そういえば、王様に会えなかったことを思い出した。初日だからいいか。今日は長旅で疲れたし、ゆっくり寝よう」
ぼさぼさの髪は海風が櫛で髪をとかしてあげた。
「そ、そんなことないですよ。あたしはどんなお仕事をすればいいですか?」
後宮では家来が身の回りのお世話をするのだそうだ。その仕事を頼んでみよう。
「虹はわたしの身の回りのお世話をすればいいから。わからないことは先輩の海風に聞いてちょうだい。海風は都の役人に負けないくらい優秀だから、いろいろ教えてもらえるわ」
「わかりました! 頑張ります! そして、あたしは一生詩花様にお使いします」
都のお城に着いた。でっかい壁に囲まれていて、強そうな兵隊が門の前で槍を持っていた。
「詩花姫さま、遠いところをよくおいでくださいました。これで後宮には30人のお姫様が揃いました。陛下もお喜びになるでしょう」
わたしが二人の召使いを連れてお城の廊下を進むと、クスクスと笑い声が聞こえた。
「あら、田舎者の詩の県の姫が来たわ」
声の主は紫色の着物を着ていた。紫色はとても高貴な色で貴族の中でもごく一部の人が身につけている。
「わたくしは火の県の火仙(かせん)。まあ、あんたなんかに負けないだろうけれど、お妃様の座は諦めなさい」
「あ、あの。あたしは召使いなのですが」
虹が戸惑っている。虹のほうをお姫様だと思ったみたいだ。
「な……」
火仙は恥をかかされたと思ったみたいだ。
「お、おぼえてらっしゃいっ!」
そのやりとりを見ていた青年がくすりと笑った。よく見ると、先ほど街中で会った役人だった。
「僕の名前は仁(じん)っていうんだ。後宮や街の警備をしている。火仙さまには困っていたら、少し助かったよ。他の姫様へもケンカ腰で性格がきついんだ。でも後宮一の美人で勉強も芸も一位」
なるほど。後宮は女の子ばかりで競争意識も高い。みんなお妃様になりたいから美しさと勉強や芸などを磨くことに忙しいと聞いている。
「詩花さま、こちらへついてきて」
仁についていくとお城の中にいくつもの屋敷が建っていた。お姫様と召使いが暮らすには十分な広さだ。
「詩花さまは一番最後に来たから一番すみっこの屋敷だ。でも屋敷の広さはどれも同じだから安心して」
そう言うと、仁は屋敷の入り口で立ち止まった。
「あれ? 中には入らないの?」
「王様以外の男がお姫様の屋敷の中に入ったら罰があるんだよ。お姫様はみんな王様のお妃様候補だからね」
なるほど、王様の妻になるかもしれないのだから当たり前といえば当たり前だ。
それにしても、わたしが妃になるつもりはないとして、他のお姫様と仲良くなれるのか心配だな。みんなと仲が悪いのはやっぱり嫌だし。出来れば友達の一人くらい作りたい。
「ねぇ、仁。お姫様同士で友達になったりすることあるの?」
「うーん、教養のある人たちだから喧嘩したりはしないけれど……友達になるのは難しいかもな。やっぱりライバル同士だから」
「そうなんだ。時間はあるし、友達を一人でもつくれるようにゆっくり頑張ってみるよ」
「そうだな。困ったことがあったら俺に言ってくれ。じゃあな」
そういえば、王様に会えなかったことを思い出した。初日だからいいか。今日は長旅で疲れたし、ゆっくり寝よう」