幼なじみの過保護愛 -星のかけらは純愛のしるし-

*◆*◆*


 上司に頼まれていた書類は無事に資料室へ運び終えた。だが重い紙束を下ろすことはできても、心の中にあるモヤモヤした気持ちは簡単に手放せない。

 資料室内に、咲の深く重いため息が響く。

 美琴から頼まれた連絡先を、どうやって光希に渡せばいいだろうか。どのタイミングで、どんな顔をして、どういう言い方で手渡せば、私情を挟まないフラットな仲介役に徹せるのだろうか。

(別に、はじめてじゃないけど……)

 これまでにも『光希に連絡先を渡してほしい』『光希との仲を取り持ってほしい』『光希と二人きりになるチャンスを作ってほしい』と同年代の女性に頼まれたことはあった。

 ただそういうお願いごとをしてくる相手は、大抵の場合が親密な関係を築いてきた友人ではない。あまり話したことのないクラスメイト、同じ塾に通う同級生、なんならうっすら顔を知っている程度の、ごく浅い関係の人たちばかり。

 だから今まではやんわり断ることにも、さりげなく話題を逸らして仲介役を回避することにも、一切のためらいがなかった。信頼が希薄な人たちとの関係がこじれることよりも、その人たちが光希と恋人になることを想像する方が、何倍も耐え難かったからだ。

 だが今回は違う。美琴は気の許せる仲が良い同僚だ。だからこそ咲は、咄嗟に『断る』『話題を逸らす』という選択ができなかった。

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