幼なじみの過保護愛 -星のかけらは純愛のしるし-
美琴の希望はできるだけ叶えてあげたい。受け取ったからにはちゃんと渡すつもりもある。もちろんその連絡先をどうするか、というのは光希が決めること。ならば咲は機械的に『橋渡し役』を担うだけ。
――それはわかっているのだが、いざ渡す瞬間になると、複雑な感情が顔や態度に出てしまう気がしている。
長年秘めた気持ちを伝える勇気もない。一歩踏み出せば光希を縛りつけるだけ。そう考えている自分がこんなことで悩むこと自体、矛盾していると気づいているのに。ただの幼なじみというだけで恋人でも何でもない自分には、そんな感情を抱く権利もないのに。
「あれ、池田じゃん」
「!」
考えごとをしながらトボトボと資料室を出たところで、意外な人物に出くわす。
名前を呼ばれたので顔を上げると、一度は咲の目の前を通り過ぎた相手が――同期の男性社員、中塚柊太が足を止めて振りり、こちらを見つめていることに気がついた。
「中塚くん。お疲れさま」
咲が声をかけると、柊太がニカッと笑顔を見せて傍まで近づいてくる。何気なく視線を下げると、彼の手に営業先で使う見本資料の入ったプラスチックケースと、自社のアクリルキーホルダーがついた車の鍵が握られていた。
「外回り?」
「そうなんだよ~~。も~~この地獄の暑さの中、社用車のエアコンが急にぶっ壊れてさぁ……!」
「えぇっ!? 大丈夫……!? じゃあすごく暑かったでしょ? 熱中症になったりとか……!」
「ああ、それは平気。ほら、俺、身体だけは丈夫だから」