幼なじみの過保護愛 -星のかけらは純愛のしるし-

 咲の質問に対して柊太が衝撃的な状況報告をしてくるが、どうやら脱水症状や体調不良にはなっていないようだ。一見細身の柊太だが体力はあるようで、咲の目の前で二の腕に力こぶを作ってみせる。散々な状況に見舞われても笑顔でいられるところは、柊太の人柄の象徴だ。

「でも流石に疲れたな。キンキンに冷えたビールが飲みたい……」
「あはは、今日は美味しく飲めそうだね」

 とはいえ、連日外気温が三十五度を超える日々が続いているのだ。冷気を生み出せない車の中は地獄に等しく、取引先との移動だけで体力を使い果たしたらしい。

 今すぐアルコールを摂取したい、と笑う柊太にくすくすと笑みを返す。するとそれまで元気に笑っていた柊太の表情が、ふっと鋭いものに変わった。

「だから、どう? 帰りに一杯」
「え……?」

 すかさず入り込んだ質問に驚き、睫毛をぱちぱちと瞬かせる。数秒遅れて、仕事の後に『飲みに行こう』と誘われていることに気づいて、う、と声に詰まった。

「ご、ごめんね……。今日はちょっと、用事があって……」

 咲が曖昧に返答すると、柊太も一、二度、瞬きをする。

 用事があるのは嘘ではない。ただしそれは『光希が迎えにきてくれる』というだけ。実際には『帰ることが用事』という状況である。

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