幼なじみの過保護愛 -星のかけらは純愛のしるし-
一度言葉に出してしまうと感情が開放的になって、するすると言葉が出てくるようになるのだろうか。入社して一年半、それまで柊太からそんな気配を感じたことはなかったのに、急にわかりやすい言葉で翌日の予定を確認され、しかも今度は『デート』という明確なワードを使って誘われてしまう。
だが今の咲には『嬉しい』とも『困る』とも言えない。柊太の感情を受け入れる余裕がない。けれど自らの主張を告げた柊太の中には、一定の『着地点』が生まれたらしい。
「考えといて。明日、また誘うから」
「あ、中塚くん……!」
咲が何かを言う前に――今この瞬間に焦って答えを出させるつもりはない、とでも言いたげに、突然話を打ち切られて「じゃ」と手を挙げられてしまう。
慌てた咲は名前を呼んでみたが、元々進もうとしていた方向へ足を向けた柊太は、あっという間にその場から走り去ってしまった。
資料室の前の廊下には、咲だけがぽつん……と取り残される。
「え……えっと……」
急な出来事に思考が停止する。
この後、光希に会った際に渡さなければならない『美琴の連絡先』の件だけでも、困惑しているというのに。
仲が良くて頼れる同期だったはずの柊太からさらなる悩みの種が植えつけられ、そっと頭を抱えてしまう咲だった。