幼なじみの過保護愛 -星のかけらは純愛のしるし-
*◆*◆*
「光希くん、これ」
「ん?」
車が停止し光希がエンジンギアをパーキングに入れたことを確認すると、助手席のシートベルトを外すよりも先に目的のものを彼に差し出す。
咲の親指と人さし指の間に挟まれた紙きれをじっと見つめて、光希が不思議そうに首を傾げた。
「なんだ?」
「私の同僚の椎山美琴ちゃんって、覚えてる?」
咲の一言に光希の左の眉がぴくりと動く。咲の返答が予想外だったために、少し驚いているようだ。
「ああ、覚えてるよ。前に咲と一緒にいて、挨拶した子だろ」
「そう。これ、その子の連絡先。光希くんに渡してほしい、って頼まれたの」
「……」
咲が一気に説明すると、光希もすぐに状況を把握したらしい。彼の黒い瞳が親指の先端――咲の爪に塗られたピンクベージュのワンカラ―ネイルをじっと見つめる。
いつものように迎えにきてくれた光希の車へ乗った直後ではなく、こうして咲の住むマンション前に到着してから渡したのは、会社を出てから家に着くまでの会話が『美琴の話』になることを避けたかったからだ。
仕事にも恋愛にも一所懸命で前向きな美琴を、同僚としては非常に好ましく思っている。しかしだからといって、光希と美琴の話で盛り上がりたいとは思わない。
連絡先を渡されたことで美琴に興味を抱いた光希から、美琴の人となりや仕事中の様子を聞かれても困る。我ながら心が狭いと思うが、笑顔で明るく答えられる気がしない。女性から連絡先を渡されて喜ぶ光希の姿も、見たくない。
だから無意識のうちに視線を逸らして、心のざわつきを誤魔化すように息を潜める。そのまま彼が便箋を受け取ってくれる瞬間を待っていると、数秒の時間を使って考えごとをしていた光希が、ぼそりと何かを呟いた。