幼なじみの過保護愛 -星のかけらは純愛のしるし-
日没が近づいてきたせいだろうか。真っ青だった空の高い場所が、少しずつ群青色ににじみ始めている。それに陽が沈みゆく低い場所も、オレンジ色に染まりかけている。
咲は昔から、正反対の色彩がじんわりと濃淡を作るこの時間の空模様が好きだった。太陽と宵闇が織りなす儚いグラデーションはその一瞬一瞬でまったく違う表情を見せてくれるので、いつ見てもまったく飽きがこない。
それにこの時間は『一番星』を見つけられる。日没前後の空で一番最初に輝く星は、咲にとっての希望の光――『光希』の星だった。
中学から高校の部活中やその帰り道は、いつも光希の隣から一番星を探していた。あのささやかな日々と思い出は何年経っても色あせることがない、咲のかけがえのない宝物だ。
(星……あんまり見えないな……)
そういえば、と、きょろきょろと視線を動かしてみて、ふと気がつく。
視界の中に『一番星』を見つけられない。輝く光希の星が見当たらない。
それもそのはず、一軒家が多く高層ビルが少ない郊外と違い、都心は四方八方に高い建物がそびえ立っている。建物をひとつかわしてもその奥に別の高い建物があるので、場所によっては一番星どころか、月さえ見つけられないのだ。
「……」
ふいに孤独の気配を感じる。夕闇の空に光希の星を探し出せないことに、言葉にできない切なさを覚える。
美琴の連絡先を握りしめた左手ではなく、空いた右手で左の瞼にそっと触れる。すでに痛みも違和感もない眼窩の奥では、何ともいえない複雑な感情が渦を巻いていた。