幼なじみの過保護愛 -星のかけらは純愛のしるし-

 美琴のアドバイスから気づきを得た咲と光希は、今までの関係から少しだけ距離を取ることにした。距離を取る、というよりも、互いをよく見て相手を知るよう、そして自由な選択ができるように『空間を作る』という表現の方が正しいかもしれない。

 咲は光希に『公共交通機関を使って自分一人で出勤したい』と主張した。最初は心配されたが、その選択が咲の生活の中に新しい発見をもたらしたり、自由な意思決定を可能にすると気がついてからは、彼も過度な心配は控えるようになった。

 そして光希は『咲を送迎するという都合に合わせて選んだ会社ではなく、以前から興味があった別の職種に転職する』という一大決心をした。社会人二年目のうちに仕事を変えることは他者から良い印象も悪い印象も受けそうだが、光希自身はさほど悲観的にとらえていないらしく、むしろ以前より生き生きとしている。

 どんなに相手を大切に思っていても、相手の一部しか見えないほど、そして自分でも自由に身動きがとれないほど近くにいたのでは、次第に窮屈さを感じてしまう。それよりも、少しだけ自由に動くための空間を設け、互いの全身を俯瞰し合い、困ったことがあったら手を差し伸べて握り合う方が健全だ。そう教えてくれたのは、間違いなく美琴の一言だ。

 だから彼女には感謝しているのに。

「そりゃ、あんなに顔くっつけてたら見えるもんも見えないわよね」
「!? 見てたの……!?」
「見てまっせぇ~ん。ごちそ~さまで~す」
「もう、見てるじゃない!」

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