義兄の愛に人生観を変えられ……

 次の日の朝になり、何を着て行こうかクローゼットを見ると、緑色の服で埋め尽くされている。
 その中でも色が薄い緑のワンピースを着て、茶色いブーツを合わせ外に出た。
 待ち合わせの場所に行くと、黒いコートを着て空を見上げながら待っている亮太君がいた。
 空の青と黒いコートとマッチしていて絵になる。やっぱり彼は素敵な人だ。
 私の姿に気がつくと手を上げて笑顔で近づいてきた。
「わざわざ悪かったな」
「大丈夫。短い時間なら」
「そっか。じゃあ、とりあえず近くの喫茶店に入ろうか」
「うん……」
 連れて来られたのは、ジャズが流れていてコーヒーの香りが漂っている素敵な喫茶店だった。コーヒーとホットココアを注文すると小さなテーブルを挟んで私たちは見つめ合った。
 学生時代に大人になったらデートをしたいなと何度願ったことか。でもその願いは叶うことはないと諦めていたのに皮肉にもこうして夢が叶ってしまっている。
「今日は休みの日なのに本当にありがとな。デートの約束とかあったんじゃないのか」
 まさか私に恋人がいるとでも思っているなんて、びっくりして笑ってしまった。
「恋人なんてできたことないよ」
「ふーん」
 興味があるようなないような微妙な返事をして、亮太君はコーヒーを一口含んだ。
「ごめん」
「何?」
「ノートに書いてあった小説……面白くてついつい読んじゃったんだよね。いい小説だなと思っててさ。あの続きってどうなったの?」
 やっぱり読まれてしまったんだと変な緊張が襲う。
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