義兄の愛に人生観を変えられ……

「……私の、人生に関わらないで」
 大きな瞳に涙をいっぱいためて俺のことを思いっきり睨んだ。そしてその場から去って行ったのだ。
……やっぱり俺は、愛しい人に嫌われていたんだ。
 そう実感せざるを得ない。
 スラックスのポケットに手を入れて、今さっき撫でてしまった手をグッと握りしめる。
 みどりが実家から出て行く日は、さよならの言葉すら言ってもらえなかった。
 最後に俺は離れても元気で頑張ってほしいと万年筆を購入してプレゼントする予定だった。
 そして、仕事で成功したら必ず迎えに行くと告白する予定だったのだが……
 お別れできずに落胆する俺の肩をポンポンと継母が優しく叩いてきたのだ。
『もう行ってしまったわよ』
『……ちょっと遅かったですね』
『予定より早く出て行ったから。お兄ちゃんに会いたくなかったんじゃないかしら。今までずっと黙っていたんだけど……。お兄ちゃんから色目を使われて嫌だったと言ってたわよ。年頃の男の子と女の子ですもの。お父さんとお母さんが結婚しちゃっていろいろと悩ませてごめんね』
 自分は恋愛対象ではないし、嫌われているのだと、全身の力が抜けていくような感覚があった。
 幼い頃に両親が離婚した時、家族が壊れてしまうことへの恐怖を覚え、家族のことを優先して考えてきた。
 孤独というものは恐ろしくて怖いものだ。
 それなのに、よりによって、俺は妹のことを好きになってしまった。
 法律的には問題がないらしいが……
 家族という形の中で暮らしていたのに、みどりの雪のように美しくて繊細な心に惹かれてしまった。
 そして彼女の小説を読む中で、自分も何か創作する仕事に就きたいと思うようになり今がある。
 社会人になってからもいろんな女性と関わることがあったが、みどりを超える人はいなかった。
 ずっと、ずっと俺は……片想いをしている。
 まさか同じ会社で働くことになるなんて思っていなくて、これは運命かもしれない。
 真面目でまっすぐすぎる彼女が苦しくて辛い時は自分が支えていく役目なのだ。
 そう思って今こうして励ましに来たのに、やっぱり俺のことが嫌いだったんだ……
 
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