指先から溢れる、隠れた本能。



 一瞬、目を閉じて深呼吸する。彼女のそばにいるだけで、体の奥から熱い衝動が湧き上がってくる。だが、彼女を不安にさせたくない。彼女を傷つけたくない。

 だから、俺は自分の「dom」の性質を隠し続ける。彼女が自分の「sub」を受け入れるまで、俺はこの秘密を抱えたまま、彼女のそばにいるしかない。

 窓の外では、街がゆっくりと夜の帳に包まれていく。オフィスの蛍光灯が点灯し始め、淡い夕陽と人工の光が交錯する。俺と六花の間に流れる微妙な距離感は、まるで目に見えない糸で結ばれているかのようだ。心と体の距離が、ゆっくりと、しかし確実に縮まっていく予感が、静かに漂っていた。
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