指先から溢れる、隠れた本能。
「え……あ、はい……」
頬が熱を持って、慌てて視線を落とした。震える手で書類を受け取るけど、指先が一瞬だけ彼の手に触れてしまう。その小さな接触が、まるで電流のように体を走り抜けて、思わず息を呑んだ。
視界の端で、蒼空さんの存在が大きく膨らむ。机を挟んでいるだけの距離なのに、彼の気配が空気を重くして、心をざわつかせる。書類に目を落とそうとするけど、頭の中は彼の声や仕草でいっぱいだ。
(……どうして、こんなにドキドキするの?)
蒼空さんが近くにいるだけで、体の感覚が異様に鋭くなる。胸の奥のざわつき、手のひらの熱、軽く震える指。
理性では「どうしてこんな反応をするの?」と疑問が浮かぶのに、体は勝手に反応してしまう。彼の声や視線が、まるで磁石のように私の心を引き寄せた。
机を挟んだ距離が、近すぎるのに遠い。私はまだ、自分が「sub」だということを完全に受け入れられていない。
医者に言われたあの言葉──「あなたはサブの性質を持っている」って。
あれはまだ、どこか現実感のないものとして、頭の片隅に押しやっている。
でも、蒼空さんのそばにいると、心の奥で「この人のそばにいたい」っていう思いが、抑えきれずに湧き上がってくる。
(……なんで、こんなに心が揺れるんだろう。でも、蒼空さんのそばにいると、どこか安心する……)