指先から溢れる、隠れた本能。



 やがて、呼び出しベルが無機質な音を立て、私の番号が呼ばれた。立ち上がり、指定された【ダイナミクス測定室】と書かれた部屋へと向かう。ドアを開けると、看護師が手際よく準備を進めていた。白衣の袖が小さく揺れ、彼女の動きはまるで機械のように正確だった。


 「村松さんですね。こちらでダイナミクス検査を行います。リラックスしてくださいね」 


 看護師は穏やかに微笑んだが、その声は事務的で、私の緊張を解すには至らなかった。

 検査は淡々と進んだ。センサーを装着され、腕に巻かれたバンドが軽く締まる感覚に、私は無意識に息を止めた。モニターに映し出される波形や数字は、私にはまるで異言語のようだった。検査が終わり、看護師が「これで終了です。お疲れ様でした」と告げると、私は小さく頷き、部屋を後にした。 

 まだ胸の奥に残るざわめきを、なんとか笑顔で押し隠して。



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