指先から溢れる、隠れた本能。
蒼空さんの視線が私を捉えるたびに、体の奥がじんわりと熱を持ち、呼吸が少し速くなる。私は慌てて同僚との会話を切り上げ、書類に目を落としたけど、頭の中は蒼空さんのことでいっぱいだった。
(……蒼空さん、なんであんな目で……)
昼休みが近づき、資料室に二人きりになった瞬間、蒼空さんが静かに近づいてきた。彼は軽く呼吸を整え、低く静かな声で私に話しかけた。
「六花、俺の話をちゃんと聞け」
その声に、思わず体が固まった。振り返ると、蒼空さんの瞳が私を真っ直ぐに見つめている。普段の穏やかな彼とは違う、どこか強い意思が滲む表情に、心臓がドキドキと鳴り出す。
「はい、蒼空さん」
私の声は、緊張で少し震えていた。蒼空さんは一瞬、目を細め、静かに続けた。
「今日、あの男と仲良さそうにしてただろう」
その言葉に、胸の奥で小さな動揺が広がった。彼の声は穏やかだったけど、どこか抑えきれない感情が滲んでいる。蒼空さんがそんな風に話すのは初めてで、心がざわつく。