指先から溢れる、隠れた本能。



 「……はい、少し仕事のことで話してました」


 私は素直に答えたけど、声がかすかに震えているのが自分でもわかった。蒼空さんは軽く息を吐き、ゆっくりと私に近づいてきた。彼の気配が空気を重くし、私の心をさらに揺さぶる。目線が合った瞬間、低く囁くような声が耳に響いた。


 「……俺は、嫌だ。お前が他の男と仲良くするのは、俺が許さない」


 その言葉に、心が一瞬驚きでいっぱいになった。普段の優しく穏やかな蒼空さんとは違う、強い意思がそこにあった。でも、なぜか胸の奥で、彼の独占的な気持ちが少し嬉しく感じられた。頬が熱くなり、視線を落とすけど、心臓の鼓動が止まらない。




 「蒼空さん……」


 私の声は小さく、震えていた。蒼空さんはさらに一歩近づき、そっと私の顎に指を添えて顔を上げさせた。その触れ合いに、体がビクッと反応する。まるで電流が走ったように、体の奥が熱くなっていく。


 「お前、俺のこと欲しいだろ? だったら……今日からは、俺の言うことをちゃんと聞け」


 その低く甘い命令に、思わず小さく息を漏らした。



< 37 / 51 >

この作品をシェア

pagetop