指先から溢れる、隠れた本能。
第九章:甘い躾と信頼の深化
午後の資料室は、静かでひっそりとしていた。窓から差し込む柔らかな日差しが、古い書棚や積み上げられた書類に淡い光を投げかけ、埃の匂いがほのかに漂う。
古びたソファの革の感触が、微かな軋みを上げ、部屋に独特の親密さを添えている。私はソファの端に腰を下ろし、胸の奥でざわつく熱を抑えようとしていた。でも、蒼空さんの近くにいるだけで、心臓がドキドキと鳴り、体の奥が疼いてしまう。
彼の気配──低く響く声、穏やかだけどどこか鋭い視線、そっと近づく体温──それらが、私の心と体を強く揺さぶっていた。
「六花……ちょっと座ってくれ」
蒼空さんの声が、静かな資料室に響いた。その声には、いつもとは少し違う、真剣な響きが含まれていた。私は少し緊張しながら、彼の膝のそばに腰を下ろした。昨日の嫉妬の余韻がまだ胸の奥に残っていて、彼の視線を感じるたびに、じんわりと甘い熱が広がる。