指先から溢れる、隠れた本能。
「蒼空さんがそばにいてくれるから、安心してるんです」
私の言葉に、蒼空さんの瞳が一瞬揺れた。彼の手が私の手を軽く握り、温もりがじんわりと伝わる。私はまだ、自分の『sub』の性質を完全に受け入れきれていない。
でも、蒼空さんのそばにいると、心の奥で「この人に全てを預けたい」という思いが、抑えきれずに溢れてくる。あの夜の甘い命令や、嫉妬、罪悪感──全てが、私たちの絆をより強くした。
「六花、俺……お前に、ちゃんと伝えたいことがある」
蒼空さんの声に、胸の奥がドキリとした。彼の瞳には、真剣さと温かさが宿っている。私は息を呑み、彼の言葉を待った。
「俺はお前を幸せにしたい。契約とか、domとかsubとか、そんな形式を超えて、ただ……お前と一緒にいたい」
その言葉に、心が震えた。蒼空さんの声は、まるで私の心を直接包み込むように響いた。私は目を潤ませ、思わず彼の手を強く握り返した。
「蒼空さん……私も、ずっと一緒にいたいです。どんな形でも、蒼空さんとなら……」
私の声は震えていたけど、心からの言葉だった。蒼空さんは微かに微笑み、私の額にそっと額を寄せた。その瞬間、体の奥から温かな波が広がり、心が満たされる。資料室の静かな空間に、私たちの呼吸と心臓の鼓動だけが響き合う。窓から差し込む光が、書棚に淡い影を落とし、まるで私たちの絆を祝福しているようだった。