指先から溢れる、隠れた本能。
封筒を切り開き、【村松六花 様の検査結果のお知らせ】と書かれた紙を取り出す。
基礎検査項目──血圧、血液検査、視力、聴力──すべて「異常なし」。私はほっと胸を撫で下ろした。
だが、最後のページをめくった瞬間、視線が凍りついた。一番下の欄、【ダイナミクス検査】の結果に、赤い文字で「要再検査」と記されていた。
「……えっ、なんで」
声が震え、紙を握る手がわずかに震えた。ダイナミクス検査とは何だったのか、詳しい説明を聞いていなかった。異常が見つかったという事実は、私の心に重い石を落とした。
何か悪い病気なのではないか。あるいは、もっと深刻な何かなのか。頭の中をぐるぐると不安が駆け巡り、眠れない夜だった。
再検査の日、指定された病院の待合室は人で溢れていた。白い壁に囲まれた空間は、消毒液の匂いと、時折響く看護師の呼び出し声で満たされている。
私は予約票を握りしめながら、ソファに座って順番を待った。隣には、背筋をまっすぐ伸ばした男性が座っていた。少し長めの黒髪が柔らかく額を覆い、穏やかな微笑が浮かんでいる。落ち着いた雰囲気の彼は、どこかこの雑然とした待合室にそぐわない存在感を放っていた。