【改稿版】幼馴染との婚約を解消したら、憧れの作家先生の息子に溺愛されました。
1・幼馴染との同棲
——また、落ちた。
面接の帰り道、私はスマホの画面を見つめて、がっくり肩を落とした。
『真宮しのぶ様──貴殿の今後のご健勝とご活躍をお祈り申し上げます』
お祈りメール、これで何通目だろう? 数える気力もない。
不況のあおりで働いていた会社が倒産し、私は失業保険をもらいながら再就職に向けていくつか面接を受けていた。結果は……全滅だ。
「もう、やだ……」
新卒で就活していたときのことを思い出して、「あの時も大変だったなぁ」とため息が出る。そういえばいつだったか、道で転んだ男性の書類を拾って、面接に遅れそうになったっけ。なんとかその企業に就職できたけど──まさか数年で倒産するなんて、誰が思うだろう。
駅前のロータリーで立ち尽くしていると、後ろから車のクラクションが聞こえた。
ビクッとして振り返ると、見慣れた白の車が停まってて、運転席の人物が手を振る。
「裕貴。迎えにきてくれたの?」
彼は穂鷹裕貴。
二歳年上だけど、実家が近所で小学生の頃からの付き合い──いわゆる幼馴染。
そして、現在私の恋人でもある。
助手席に乗り込むと早速、今日の面接のことや、お祈りメールの愚痴を漏らしてしまう。
「まあまあ、まだ十社くらいだろ? 次があるって」
裕貴は、あっけらかんとした態度で慰めてくれるけれど……。
「やっぱり資格がないのがダメなのかな……。私なんて何の取り柄もないし、パソコンくらいしか使えないし」
まだ十社だと言うが、もう自信がなくなってきた。
「こーら。出た、しのぶの『私なんて』」
横目でちらりと私を見たかと思うと、コツンと頭を小突かれる。
「おまえのいいところは、めげないところだろ。頑張れよ」
赤信号で止まると、頭をわしゃわしゃと乱暴に撫でてきた。
「も、もうっ! 今朝頑張って髪まとめたのに!」
「気にすんな。俺は、今のまんまのおまえが好きだし」
そうやって、屈託なく笑う裕貴に対して、私はいつも本気で怒れないのだった。
面接の帰り道、私はスマホの画面を見つめて、がっくり肩を落とした。
『真宮しのぶ様──貴殿の今後のご健勝とご活躍をお祈り申し上げます』
お祈りメール、これで何通目だろう? 数える気力もない。
不況のあおりで働いていた会社が倒産し、私は失業保険をもらいながら再就職に向けていくつか面接を受けていた。結果は……全滅だ。
「もう、やだ……」
新卒で就活していたときのことを思い出して、「あの時も大変だったなぁ」とため息が出る。そういえばいつだったか、道で転んだ男性の書類を拾って、面接に遅れそうになったっけ。なんとかその企業に就職できたけど──まさか数年で倒産するなんて、誰が思うだろう。
駅前のロータリーで立ち尽くしていると、後ろから車のクラクションが聞こえた。
ビクッとして振り返ると、見慣れた白の車が停まってて、運転席の人物が手を振る。
「裕貴。迎えにきてくれたの?」
彼は穂鷹裕貴。
二歳年上だけど、実家が近所で小学生の頃からの付き合い──いわゆる幼馴染。
そして、現在私の恋人でもある。
助手席に乗り込むと早速、今日の面接のことや、お祈りメールの愚痴を漏らしてしまう。
「まあまあ、まだ十社くらいだろ? 次があるって」
裕貴は、あっけらかんとした態度で慰めてくれるけれど……。
「やっぱり資格がないのがダメなのかな……。私なんて何の取り柄もないし、パソコンくらいしか使えないし」
まだ十社だと言うが、もう自信がなくなってきた。
「こーら。出た、しのぶの『私なんて』」
横目でちらりと私を見たかと思うと、コツンと頭を小突かれる。
「おまえのいいところは、めげないところだろ。頑張れよ」
赤信号で止まると、頭をわしゃわしゃと乱暴に撫でてきた。
「も、もうっ! 今朝頑張って髪まとめたのに!」
「気にすんな。俺は、今のまんまのおまえが好きだし」
そうやって、屈託なく笑う裕貴に対して、私はいつも本気で怒れないのだった。