【改稿版】幼馴染との婚約を解消したら、憧れの作家先生の息子に溺愛されました。
──コトリ、とカップを置かれる音で、現実に戻る。
「はい、どうぞ」
いつの間にか桐人さんが淹れてくれたのだと、顔を上げた。
アールグレイのいい香りがする。
「あ……ありがとうございます」
答えながら、カップを手に取り一口飲む。
自分がどれほど集中していたのかに気づいて、頬が熱くなる。
「すごい集中力だね?」
「すみません、気づかなくて」
「いや、いいですよ。同じような人間がもう一人、この家にはいますからね」
そう言って、桐人さんは苦笑しながら安浦先生の書斎の方に視線を向ける。
安浦先生はあれから無事に退院した。自宅で療養するかと思いきや、すぐに書斎に引きこもって原稿を書いている。私もつられて、唇の端をわずかに上げた。
桐人さんが私の隣に座り、肩が触れそうな距離に、ドキッとする。
何事かと思うとパソコンの画面を、覗き込むように見てきた。
「はい、どうぞ」
いつの間にか桐人さんが淹れてくれたのだと、顔を上げた。
アールグレイのいい香りがする。
「あ……ありがとうございます」
答えながら、カップを手に取り一口飲む。
自分がどれほど集中していたのかに気づいて、頬が熱くなる。
「すごい集中力だね?」
「すみません、気づかなくて」
「いや、いいですよ。同じような人間がもう一人、この家にはいますからね」
そう言って、桐人さんは苦笑しながら安浦先生の書斎の方に視線を向ける。
安浦先生はあれから無事に退院した。自宅で療養するかと思いきや、すぐに書斎に引きこもって原稿を書いている。私もつられて、唇の端をわずかに上げた。
桐人さんが私の隣に座り、肩が触れそうな距離に、ドキッとする。
何事かと思うとパソコンの画面を、覗き込むように見てきた。