【改稿版】幼馴染との婚約を解消したら、憧れの作家先生の息子に溺愛されました。
「は、恥ずかしいのであまり見ないでください……」

 パソコンの画面を伏せようとすると、
 
「なんで隠すんですか。いいタイトルですよ」
 
 私が書いている小説のタイトルが見えたらしい。
 からかうような口調に、照れてしまうが──

「えっ? そ、そうですか……?」

 褒められて、閉じかけた画面を元に戻す。
 そうなると、もっと見てほしい、なんて調子に乗ってしまう。
 我ながら、なんて単純なんだろう。
 
 桐人さんの指先が、画面の一行を指し示した。

「ここ──。すごくいいですね」
「え?」
「なんとなく、主人公の気持ちがよく表れているというか」
「わかりますか!?」
「僕を誰だと思ってるんです? 安浦栄一郎の息子ですよ」

 桐人さんは、いたずらっぽく笑った。
 桐人さんでもそんな冗談を言うんだって、なんだかおかしくなって口元を緩めた。
 自分の書いたものを理解してもらえる──これほどの喜びはないだろう。

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