【改稿版】幼馴染との婚約を解消したら、憧れの作家先生の息子に溺愛されました。
「父の小説はすべて読んでいますし、自分が関わったグッズは、穂鷹出版の原作も読んでいます。なので、僕も少しは役に立てると思いますよ」

 穂鷹の名前が出て、私は少し萎縮してしまった。
 それを桐人さんは察してくれたのか、

「……すみません、出すべき名前ではなかったですね」
「いえ……」

 桐人さんは、遠慮がちに立ち上がり私の頭にポンと手を乗せる。
 ふわりとした感触に、少し驚いてしまった。

「……邪魔にならないように、退散します。がんばって」
「はい……」

 なんだろう……。作品を褒められただけなのに、心臓が落ち着かない。
 私って、もしかしてチョロいのかな……。不思議と嫌じゃなかった。桐人さんに見守られていると思うと、もっと頑張れる気がする。
 雨音とキーボードの音が再び重なって、私の物語が静かに動き出した。

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