告白する勇気がないので、ヴァンパイアと契約してしまいました。
さっちゃんは意外にも

「へーよかったじゃん!おめでとう。」

とさらりとした感想だった。

「ちょ、急に付き合えたんだよ!?もう少し驚いてもいいでしょ?」

「え?急っていうか..普通に.悠真先輩ってアカリのこと好きそうだったじゃん」

あれ...?そうだったっけ。ううん、契約にしたことで世界線がちょっと変わったんだ。

「それより、次体育だよ!急いで支度しなきゃ」

そう言ってさっちゃんは、ジャージを取り出す。

前みたいな呆れ顔のさっちゃんが見られないのはやっぱりちょっと寂しい。
でもそれ以外はいつも通りだ。

これでよかったのかな?と思いつつ、気にしてもしょうがないと言い聞かせた。

「あ、アカリ!噂をすれば、悠真先輩きたよ」

教室のドアのところで、こちらに手を振っている。
当たり前に教室に遊びに来てくれる...実感はないけどやっぱり付き合ってるんだな...
ちょっぴり舞い上がって、駆け寄る。

「悠真先輩!どうしたんですか?」

「アカリ!今日のお昼さ、裏庭で一緒に食べない?」

「いいですね!食べたいです。」

「やった。アカリとご飯食べられるのすげー嬉しい。そしたら、4限終わった後に、裏庭集合で」

悠真先輩とご飯が食べられるなんて夢見たい...

ーーー

お昼、裏庭に向かうと悠真先輩はすでにそこにいた。
「あ、お待たせしてごめんなさい!体育の着替えがちょっと長引いて..」

「全然いいよ。ジャージ姿のアカリも可愛かったけど...」

トクンと胸の音が鳴る。

「からかわないでください!それより、ご飯食べましょう!」

そう言ってお弁当の包みを広げる。

「アカリ、その卵焼き美味しそう。」

悠真先輩が羨ましそうに見つめている。

「食べますか?」

「食べさせて」

「もう...はいどうぞ」

そんな少女漫画のような甘いやりとりを交わす。
うん、やっぱり契約してよかったかも。そう思ったのも束の間。

「..アカリお腹すいた」

後ろからシオンの声がしてドキリとする。

へ...今?

シオンが歩み寄ってくる。いやいやいや今はまずいって...!
「アカリ誰?この男。」

悠真先輩がきょとんとした顔で尋ねてくる。

「あ。えっとこの人は...その」

うまく答えられない。やばい、どうしよう。また、動けなくなる。契約は絶対だ。

「ちょっとシオン...今は嫌...!離して」

そんな言葉をシオンが聞き入れるわけはなく、血を吸い始めた。
…悠真先輩の前で。

クラクラしながらも、悠真先輩の方を見る。真顔でこちらを見つめている。

怒ってるんだろうな...。
思わず涙ぐむ。

ひどいよ...シオン。願い叶えてくれるんじゃなかったの?
叶えてはくれたけど..こんなこと...

血を吸うのがピタリと止まる。

「どうしてこんなこと...!」

シオンに怒ろうとしたが、それよりも悠真先輩が先だ。
悠真先輩の方に向き直し、


「ご、ごめんなさい...」

深々と頭を下げる。事情は後でなんとか説明しよう...

「何を謝ってるの..?全然いいよ。」

飄々とした顔で悠真先輩は答える。

「え、何言ってるんですか...?目の前で他の男の人と密着したんですよ..?いいわけないじゃないですか」

「だってアカリ可愛いもん。いろんな男が取り合うのも無理ないよ!」

ニコニコした笑顔に違和感を感じざるを得ない。
おかしい...おかしいよ。そんなのって....

「おかしい。おかしいですよ!そんなことって!」

感情的になってその場を走り去る。
後ろから悠真先輩が私を呼ぶ声が微かにする。

こんなのってやっぱりおかしい。馬鹿だった。術に頼って、いい気になって。
悠真先輩は別に私を好きなわけじゃない。どうして、今更気づいたんだろう。
ほんと馬鹿...

「アカリ」

「シオン...」

「どうして泣いてるの?別に、僕が血を吸っても悠真先輩..だっけ?あの人は平気そうだった。何も泣く必要はないよ」

「平気そうだった...だから泣いてるの。」
シオンはやっぱり人間の気持ちがわからない。
やっぱり人間とヴァンパイアは交われないんだな...

「ごめん。泣かしたの僕?人間が泣くのは悲しい感情なことはわかるよ。これまでも契約でこういう状況になることはあったんだけど、誰も気にしてなかったからさ」

いつも涼しげな顔のシオンには珍しく、驚いている様子だ。

「あ、そうだ、アメ、あげる」

「アメ?なんで急に..」

「甘いもの食べると、気持ちが幸せになるでしょ」

シオンが笑う。

「あ、ありがとう。シオンはどこから来たの?どれくらい生きているの?」

「うーん、ずっと昔500年くらいかな。場所は遠いところ。」

「500年って...想像もつかない。不老不死なの?」

「...違うよ。まあ人間よりは、体は強いけどね。10日くらい血を飲まなくても生きられるし、最悪、動物の血でもいい。まずくて僕は飲めないけど。だけど、飲まなきゃ死ぬよ。現に父親は、人間と結婚して、それからは母親の血しか飲まなかった。だから、母親が死んだ時に、一緒に死んだんだ。血を飲むことを拒んでね。」

「そう...なんだ。人間を好きになることなんてあるの?人間は『食事』なんでしょ?」

思わず問いかけた。人間とヴァンパイアは交わらないと思っていたから。

「そうだね。『食事』だよ。僕にとっては。アカリだって、ショートケーキを好きになるなんて無理だろ?」

「...!あはは。それはたしかにない!」

沈んだ心がちょっとだけ明るくなった。

「笑った。」

シオンが微笑む。

悪魔的な表情しかしないシオンのこんな表情初めてみた。
シオンは、自分の感情が何なのかわからないだけで、優しいところもあるのかもしれない...。
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