告白する勇気がないので、ヴァンパイアと契約してしまいました。
シオンとの契約を解消してから数日が経った。

「今日こそ...自分で悠真先輩に話しかけるんだ」
そう言い聞かせて、お守りのように、ハンカチを持つ。

あれから、さっちゃんも悠真先輩も、シオンに会う前に戻った。

学校で度々見かける悠真先輩が話しかけてくれなくなったのは、やっぱり少し寂しいけど、自分の力で振り向かせたい。

自身がなくていまだに話しかけられていないけれど...

『自信ないって言ってたけど、アカリちゃんは勇気ある人だと思う。』

ふと、シオンのあたたかい言葉が蘇る。

ありがとう...シオン。がんばるね。
心の中でそう呟いて、家を出た。

ーーー

河川敷を歩いていると目の前に、悠真先輩を見つける。

一人だ...チャンスかも。大きく深呼吸をして話しかけた。

「あの...!」

「え、俺?何?」
悠真先輩がきょとんとした顔で、振り返る。

「ハンカチ、ありがとうございました。やっぱり返します。本当に嬉しかったです。」

「ハンカチ?ああ..入学式の子か。わざわざありがとー」

悠真先輩が再び前を向いて歩き出そうとする。

ダメだ。これだと、また、話せなくなっちゃう...何か、何か話を..

「あの!部活!部活見に行ってもいいですか」

必死で絞り出す。

「ん?別にいいけど。許可とかいらないよ(笑)」

少しだけ笑って、答えてくれた。

ああ、一歩踏み出してよかったな...。
心が熱くなる。ああ、頑張ってよかった。シオンのおかげだよ...

シオンのことを思い出す。
血飲めてるかな..?死んじゃってないかな...

ちょっぴり勇気を持てた自分への嬉しさと、シオンへの不安が入り混じった複雑な心境で学校に向かった。

ーー

「さっちゃん!悠真先輩に話しかけられた!部活きていいって!」

教室に着くなり、さっちゃんに報告する。

「へー!すごいじゃん!アカリ。成長したなあ。」

「えへへーすごいでしょ。今日さ、放課後暇?一緒にサッカー部見に行かない?」

「まあ、バイトもないしいっか。アカリも頑張ったことだし、付き合うよ」

さっちゃんはちょっぴり嬉しそうな顔でそう言ってくれた。

「ありがとう!心の友〜〜」

やっぱり、さっちゃんとのいつもの会話。楽しい。
自分で頑張ってよかったな。

ーー
放課後、サッカー部を見に行った。

「わかってたけどすごい人...」

サッカー部にギャラリーが多いのはわかっていた。
常に黄色い観戦が響いている。

「しかも、ほぼ悠真先輩目当てでしょ?アカリライバル多いよ〜〜」

さっちゃんが意地悪そうに頬をつつきながら言った

「もう!やめてよ!まあ..確かにそうなんだけどさ..」

「ほら、早く応援しな!負けちゃうよ。」

今までの自分なら大きな声で応援なんて、何だか恥ずかしくてできなかった。
でも、変わったんだ。

「悠真先輩!頑張って!!!」

その時、悠真先輩と目があった気がした。
あれ...なんか今目があったような...気のせいかな...

そのタイミングで
「きゅうけーい!」
と先生の声が響いた。

悠真先輩は、その合図とともにこちらに向かってくる。

「あれ、やっぱ今朝のやつ。きてたんだ。」

フェンス越しに話しかけられる。

「あ、私アカリって言います。」

「アカリ、ね。覚えとく。応援ありがとな。」

そう言ってコートに戻っていく。

声、届いたんだ...嬉しい。

隣で見ていたさっちゃんが私の腕をブンブン振り回しながら

「え、アカリすごいじゃん..!急展開じゃん!!」

「うん。シオンのおかげ..」

「ん?シオンって誰?」

「あ、ううん何でもない!!」

「ふーん。変なの」

流石にヴァンパイアの話なんて信じられるわけないよね。
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