マリオネット
 泣きながらも
「嘘つき。凪だっていつかはどっか行っちゃうもん」
 溢す私に
「嘘じゃないから」
 凪は言った。

「みんな同じこと言う。でもみんなどこかに行っちゃうんだよ」

 捻くれたことを言ってしまった。

 彼はそんな私の発言を面倒くさがらずに
「うーん。そうだな、どうしたら信用してくれるかな……。あっ、そうだ。この前テレビで見たけど、背中に陽菜乃LOVEっていうタトゥを入れてもいいよ?入れ墨なら消えないし……」

 想像したら笑ってしまった。
「バカ」
 とだけ呟き、彼の上に跨り、しばらく私は泣いていた。彼はずっと優しく撫でてくれた。

「ありがとう。もう大丈夫」

 何分彼にくっついていたんだろう。先程より大分落ち着いた。
 部屋着に着替え、男にキスされたことを思い出し、洗面台に向かう。
 シャカシャカと歯を磨き、何度もうがいをして、リビングに戻る。

「歯磨き、すごく長かったけど、大丈夫?歯が痛いの?」

 彼が子どものように素直に質問をしてきたので
「ん……。さっきの男にキスされたから、気持ち悪くて……」
 私はそう、ありのままを答えてしまった。
「キス、されたの?」
 凪は何かキッチンで作業をしていたが、手が止まったように見えた。
「えっと……。うん」
 ここまで言って「されてない」とは言えなかった。
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