ひまわりみたいなあなたにもう一度恋をする~再会したのは元不良の同級生~

 ◇
 
「ただいま」
「おかえり、姉ちゃん」

 定時で退社し帰宅するなり声を掛けてきたのは今年の春、大学を卒業し社会人になったばかりの六歳年下の弟の大悟(だいご)だ。

「おかえり、美織」
「ただいま、お母さん」

 ちらし寿司の桶をダイニングテーブルへ運ぶのは母だ。
 美織の家族は母と大悟のふたりだけ。父はいない。大悟が生まれて二年後に両親は離婚してから、三人は築三十年の3LDKの狭いアパートの中でひっそりと暮らしている。
 美織は自室で着替えを終えると、リビングダイニングへ戻り、ダイニングチェアに腰掛けた。
 テーブルには、すでに大悟が作ってくれた夕食が並べられている。
 今日のメニューは美織の大好きな豚の角煮とちらし寿司。
 転職祝いにと大悟が昨日の夜から張り切って準備してくれたのだ。

「いただきます」

 三人揃ったところで、大悟が心を尽くしたご馳走をいただく。
 食卓の話題は当然、美織の新しい職場について。

「初日はどうだった?」
「いい感じだったよ。みんな優しそうで安心した」

 大悟の問いかけに答える美織の声も自然と明るくなる。
 さすが日本でも有数の一流企業だ。
 最新のパソコン、オフィスは隅々まで綺麗で、社員用のカフェテラスなんて代物まで完備されている。
 小さな食品工場でしか働いた経験のない美織には少し贅沢に感じられるくらい。
 その分、要求される仕事の水準も高いのだろう。

「あまり頑張りすぎないようにね、美織」
「うん」

 美織は心配そうな母に笑顔で応えると今度はちらし寿司に箸を伸ばした。
 高校の同級生である正宗と再会したことは最後まで言えないままだった。

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