黒き噂の辣腕社長は強がり契約妻に生涯愛を絶やさない
 当日になり、彼の運転で実家に向かった。

 事前に連絡をしたところ、由奈のケガはずいぶんよくなったようで、負担のない範囲で若女将の仕事に復帰しているという。

 糸貫庵の閉館日が決まり、祖父母は落胆しているのではと心配だった。
 でもふたりは、由奈にとってよい条件で明け渡せると逆に安堵しているようだ。なおさら、確実に約束を守られるように見届けなければと思う。

 ほかの従業員についても、今後の身の振りが決まりつつある。

 料理人の大和は、都心の料亭へ行くことが決まっている。京都で働いていたお店が関東に進出しており、人手不足のため頼まれたのだという。
 ただこれは一時的なもので、糸貫庵のリニューアルオープンに合わせて戻る予定だ。

 大和の勤め先は外国人観光客も多く、店主の方針でヴィーガン向けの料理の研修を受けていたという。その経験を光毅さんが認め、宇和島サイドから引き続き糸貫庵で働いてほしいと提案している。

 大和はそれに応えてくれたのだと、光毅さんや由奈から教えられた。

 当の本人から連絡ないと、気づいたのはいつ頃だっただろうか。
 以前はそれなりの頻度であったのに、私が結婚してからというものメッセージすら来ない。

 なんとなく私からも送りづらくて、交流が途切れたまま今に至る。
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