黒き噂の辣腕社長は強がり契約妻に生涯愛を絶やさない
「お姉ちゃん、ずいぶん愛されてるんだね」

「なっ」

 再び勢いよく由奈の方を向く。さっきから、このふたりに振り回されてばかりだ。

「ほら、結婚が急だったから。これでも心配してたんだよ」

「由奈……」

 からかい半分かと思いきや、彼女はせつなげに微笑んだ。

「でも、よかった」

「依都のことは一生大事にするから、心配しないで」

 由奈の不安を吹き飛ばすように、光毅さんがきっぱりと宣言する。

 ドキッと胸が高鳴ったのは一瞬で、それが本心だったらいいのにと泣きたくなった。
 込み上げてきた感情を、テーブルの下で手をぐっと握ってやり過ごす。ここで私が気落ちすれば、由奈に変に思われてしまう。

「ちょっと向こう見ずなところのあるんですが、家族思いで本当にいい姉なんです。姉を、どうかよろしくお願いします」

「任せてください」

 私をおいて、なんだか結婚時の挨拶のような会話を繰り広げ始めた。

「ちょっ、ちょっと。そういうのは、もういいから」

 この場の雰囲気に耐えかねたのと、胸の痛みをごまかしたくて口を挟む。
 ひとりあたふたする私を見て、ふたりは声をあげて笑った。

 話はお互いの近況報告に移る。

「少し前から、英会話の教室に通うようになったの」

 てっきり閉館後の動きだしになると思っていたが、由奈はもうしっかり前を見すえている。

「私も習ってみたいなあ」

「なんだ、依都。遠慮なく通えばいいのに」

 ぽつりと本音をこぼすと、光毅さんがすかさず返してきた。
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