黒き噂の辣腕社長は強がり契約妻に生涯愛を絶やさない
由奈に触発されて、私もすぐに英会話を習おうと決めた。
生まれ変わった糸貫庵で、それが生かされる場面はないとわかっている。なんでも知識を身に着けておいたほうが、離婚後の生活に役立つかもしれないという打算があったからだ。
季節は進み、五月に入って数日が経つ。先月末に糸貫庵は閉館したばかりで、なんとなく気分が浮かない日々が続いていた。
「依都。来月だが、仕事でイギリスに行くことになった」
夕食を食べ終えて、リビングへ移動したところで光毅さんが唐突に切り出す。食後のコーヒーを手にした彼は、ソファーに座る私の隣に腰を下ろした。
「イギリス?」
「そう。誘致を検討しているホテルなんかの視察だが、三日間の滞在になる。その後は休暇を取ろうと考えているから、後から依都もイギリスに来てほしい」
「……どうして?」
さっぱり意味が分からず首を傾げると、光毅さんはしょうがないなとでもいうような顔をした。
「依都を旅行に誘ってるんだ」
私の肩に手を添えながら、「わかっているか?」と顔を近づける。
「で、でも、公私混同はよくな――」
「聞いていたか? 依都には俺の仕事が終わったタイミングで合流してもらう。もちろん自費だから、かまわない」
「そ、そっか」
たしかに彼は最初からそう言っていたなと納得した。
「わかった。楽しみにしてるね」
海外へは一度も行った経験がない。
旅先がイギリスなんて、なんだかオシャレで興味を惹かれる。どこへ連れて行ってくれるのかと想像をして、沈んだ気持ちを振り払った。
生まれ変わった糸貫庵で、それが生かされる場面はないとわかっている。なんでも知識を身に着けておいたほうが、離婚後の生活に役立つかもしれないという打算があったからだ。
季節は進み、五月に入って数日が経つ。先月末に糸貫庵は閉館したばかりで、なんとなく気分が浮かない日々が続いていた。
「依都。来月だが、仕事でイギリスに行くことになった」
夕食を食べ終えて、リビングへ移動したところで光毅さんが唐突に切り出す。食後のコーヒーを手にした彼は、ソファーに座る私の隣に腰を下ろした。
「イギリス?」
「そう。誘致を検討しているホテルなんかの視察だが、三日間の滞在になる。その後は休暇を取ろうと考えているから、後から依都もイギリスに来てほしい」
「……どうして?」
さっぱり意味が分からず首を傾げると、光毅さんはしょうがないなとでもいうような顔をした。
「依都を旅行に誘ってるんだ」
私の肩に手を添えながら、「わかっているか?」と顔を近づける。
「で、でも、公私混同はよくな――」
「聞いていたか? 依都には俺の仕事が終わったタイミングで合流してもらう。もちろん自費だから、かまわない」
「そ、そっか」
たしかに彼は最初からそう言っていたなと納得した。
「わかった。楽しみにしてるね」
海外へは一度も行った経験がない。
旅先がイギリスなんて、なんだかオシャレで興味を惹かれる。どこへ連れて行ってくれるのかと想像をして、沈んだ気持ちを振り払った。