黒き噂の辣腕社長は強がり契約妻に生涯愛を絶やさない
 ホテルのエントランスを入って、洗練された煌びやかさに目を見張る。光毅さんがハイクラスの宿泊施設を視察していたことを、ここにきて思い出した。

 部屋に通されて、さらに目を丸くする。
 これまでに国内旅行で利用したホテルや旅館もよいところばかりだったけれど、ここはそのどこよりも豪華だ。

 泊まるのはふたりだけだというのに、リビングスペースは複数人でパーティーでも開けそうなほど広い。備え付けの家具やラグ類は白やベージュなど落ち着いた色合いで、洗練された雰囲気でありながらくつろいだ気分にさせてくれる。

 彼に続いて浴室を見に行く。オシャレなバスアメニティーが豊富に用意されており、それだけで浮かれてしまう。さらに浴槽は足を伸ばして寝そべれそうなほど広く、贅沢な仕様になっていた。

「こっちが寝室だ」

 促されて寝室に足を踏み入れる。
 ベッドがひとつしかないという予想通りの光景に、もうなにも言うまい。

「一緒に寝るのね」

「当然だ。夫婦なんだから」

 最初にふたりで旅行に出かけたときに同じベッドで眠って以来、その後も当然のようにダブルベッドの部屋ばかりになっている。
 夫婦なのだから、同じ部屋に泊るのは当然。そこは私も文句はない。別々に部屋を取るのも手間だし、費用もかさむ。
 彼が仕事で関わった場所に行くときは、とくにそうすべきだろう。結婚をしたと言いながら部屋を分けていては、変に勘繰られそうだ。

 ただ、できればベッドはツインにしてほしい。何度かそう訴えたが、すべて却下されてきた。

「ほら。荷物を片づけたらゆっくりしよう」

 着替えたいだろうからと、私を寝室に残して彼がリビングへ戻っていく。
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