黒き噂の辣腕社長は強がり契約妻に生涯愛を絶やさない
「ただいま」
実家の玄関を開けて、中に向けて声をかける。
「お姉ちゃん!?」
一階の客間から、由奈の素っ頓狂な声が聞こえてきた。
続いて、ドタバタと慌ただしい音が聞こえてくる。足を骨折している由奈に無理をさせないよう、「そっちに行くから」と声をかけた。
客間に顔を出すと、なにも知らせずに帰ったせいで由奈はかなり驚いた顔をする。
「来ちゃった」
「来ちゃったって、久しぶりに帰省?」
「ううん、違う。仕事を辞めてきたの」
ケガをして落ち込んでいるだろう由奈が気に病まないように、明るく言う。
「え?……って、え?」
「今日から私も、糸貫庵の仕事を手伝うから。もちろん、将来の女将は由奈だよ。私は自分にできることでみんなを支えていくの」
腕を曲げて力こぶを作るようにしてみせた私に、由奈はまだついて来られていない。ぽかんとしたその表情は美人に似つかわしくて、思わず声をあげて笑った。
混乱する彼女をよそに、周囲を見回す。
由奈はベッドに座って本を読んでいたらしい。タイトルをチラリと覗いたところ、内容は経営学だと気づく。
ずっと働き詰めだったのだから、ケガをした今くらい少しゆっくりすればいいのにとあきれる。
でもその半面、妹がまだ糸貫庵の再興をあきらめていないのだと感じて密かに勇気づけられた。
「これから、よろしくね」
未だに事態をのみ込みきれていない由奈をおいて、荷物を片づけようと自分の部屋へ向かった。
実家の玄関を開けて、中に向けて声をかける。
「お姉ちゃん!?」
一階の客間から、由奈の素っ頓狂な声が聞こえてきた。
続いて、ドタバタと慌ただしい音が聞こえてくる。足を骨折している由奈に無理をさせないよう、「そっちに行くから」と声をかけた。
客間に顔を出すと、なにも知らせずに帰ったせいで由奈はかなり驚いた顔をする。
「来ちゃった」
「来ちゃったって、久しぶりに帰省?」
「ううん、違う。仕事を辞めてきたの」
ケガをして落ち込んでいるだろう由奈が気に病まないように、明るく言う。
「え?……って、え?」
「今日から私も、糸貫庵の仕事を手伝うから。もちろん、将来の女将は由奈だよ。私は自分にできることでみんなを支えていくの」
腕を曲げて力こぶを作るようにしてみせた私に、由奈はまだついて来られていない。ぽかんとしたその表情は美人に似つかわしくて、思わず声をあげて笑った。
混乱する彼女をよそに、周囲を見回す。
由奈はベッドに座って本を読んでいたらしい。タイトルをチラリと覗いたところ、内容は経営学だと気づく。
ずっと働き詰めだったのだから、ケガをした今くらい少しゆっくりすればいいのにとあきれる。
でもその半面、妹がまだ糸貫庵の再興をあきらめていないのだと感じて密かに勇気づけられた。
「これから、よろしくね」
未だに事態をのみ込みきれていない由奈をおいて、荷物を片づけようと自分の部屋へ向かった。