黒き噂の辣腕社長は強がり契約妻に生涯愛を絶やさない
「ありがとうございました」

 結局、彼は靴とバッグにとどまらず、カーディガンや日傘まで購入を決めた。

「光毅さん! 買いすぎです」

 お店を出て、すぐさま苦言を呈す。なんとか声量は抑えたが、代わりに視線に想いを込める。

 肩をすくめた光毅さんは、立ち止まって私の方を振り向く。それから身を屈めて、お互いの鼻がつきそうなほど顔を近づけた。

「愛する女性を思うままに着飾らせたい。夫の些細な願いを叶えさせてくれて、うれしいよ依都」

「ち、近い。ここ、外だから」

 彼の胸もとをグイっと押す。さすがに自重してくれたのか、意外と簡単に離れてくれてほっとした。
 と、油断したのがいけなかった。今度は私の耳もとに顔を近づけてささやく。

「相変わらず、俺の奥さんは恥ずかしがり屋だな。仕方がない。帰ってふたりきりになったら、思う存分かわいがってやる」

 パッと距離をとり、手で耳を押さえる。

 私の反応が面白かったのか、彼は声をあげて笑った。
 もちろん帰宅後はいつものようゼロ距離で過ごし、なにかと疲れる一日になった。


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