黒き噂の辣腕社長は強がり契約妻に生涯愛を絶やさない
 祖父母らを探す途中で、地元の人たちから「幸せそうだね」「おじいさんらも喜んでいるだろうなあ」などと声をかけられる。

「あっ、由奈!」

 ようやく妹の姿を見つけて駆け寄る。隣には、祖父母の姿もあった。

「お姉ちゃん!」

 三人が笑顔で迎えてくれる。

「さっきのセレモニー、お姉ちゃんまで前に立つなんてびっくりしちゃった。本当、すごい人に嫁いだんだね」

 屈託ない様子で言われて、曖昧な笑みで返す。隣の祖父母は、私たちのやりとりを微笑ましく見つめていた。

「なんか、この辺りも見違えちゃうね」

 賑やかになったエリアを、由奈が見回す。

「そうだね。でも、レジャーを存分に楽しんだ後の温泉はきっと格別だよ」

 すべてが変わってしまったわけではない。ここの売りはやっぱり温泉で、それは昔から守ってきたものだ。

「そうだね。糸貫庵もその仲間に入れてもらえて、本当によかった。私、ちゃんと守っていくから」

 以前から妹はしっかり者だと感じていたが、手をぐっと握って宣言した彼女は覚悟を決めているようで、ますます頼もしく見える。

「うん。応援しているからね」

 あの場所はもう実家だとは言えないけれど、由奈が守っていってくれるのならそれで十分だ。
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