黒き噂の辣腕社長は強がり契約妻に生涯愛を絶やさない
「大丈夫だ、依都」

 口づけながら頭をなでられているうちに、体のこわばりがわずかに緩む。その隙を突くように、彼の指が私の体内に侵入した。

 痛いかと尋ねられて、首を横に振る。慣れない感覚に変な感じがするけれど、痛みはない。

「きゃあ」

 ばらばらと動く指先がある点を掠めたとき、強い快感が体を走り抜ける。それから同じところばかりを刺激されて、ぽろぽろと生理的な涙が溢れてきた。

 ぐっと閉じた瞼の裏が、次第に白く染まる。なにかに急き立てられるような感覚に、たまらず光毅さんにしがみついた。

「あっ……ああ……」

 ついに絶頂を極め、手足に力が入る。剥き出しの胸もとに光毅さんの頭を抱き寄せてしまうが、恥ずかしいとかかまっていられない。

 快感の波が全身に広がっていく。

 それから急激な気怠さに襲われて、ベッドの上にだらりと四肢を投げ出した。

 受け身でいたというのに、呼吸はすっかり上がっている。初めての経験に呆然として、肌を晒していることすら自覚がない。
 汗ばんで額に張り付いた前髪を光毅さんがそっと振り払い、そこに優しく口づけた。

 体を起こした彼が、私のもとを離れていく。起き上がるのも難しくて、それをぼんやりと視線で追った。

 ベッドを降り、乱雑に服を脱ぎ捨てていく光毅さんを見つめる。彼がベルトに手をかけたところでハッとして、慌てて目を逸らしながらシーツを被った。

 私の様子に、光毅さんは気づいているのだろう。「今さら?」とクスクス笑いながら、再び覆いかぶさってきた。
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