黒き噂の辣腕社長は強がり契約妻に生涯愛を絶やさない
 ふたりと別れて車に乗り込み、光毅さんがエンジンをかける。
 なかなか発進させないことを不思議に思い、隣を見た。

「依都」

「ん?」

「結婚式に、憧れはあるか?」

 急にどうしたのかと首を傾げつつ、素直に気持ちを明かす。

「うーん、それなりに? おじいちゃんたちに花嫁姿を見せたら喜んでくれるだろうなっていうくらいだけど」

 淡白と言われるかもしれないけれど、正直なところものすごく強い思い入れはない。自分が挙げたいというよりも、両親に代わって私を育ててくれた祖父母に感謝を伝えるためにという感覚だ。

「式について、ずっと考えてはいたんだ。ほら、俺たちの始まりは特殊だったから、すぐに挙げるっていう感じでもなかっただろ?」

「うん」

 そもそも、いろいろと思い悩んでいたあの頃の私に結婚式を考える心の余裕はなかった。

「斗真たちと一緒にというのは一考の余地なく却下するが、家族だけを招いた式を挙げるのはどうだろうか?」

 今さらだが、彼ほどの立場にいる人がそれでいいのだろうかと尋ねると、「そんなことは考えなくていい」と返ってくる。
 問題があるのなら、結婚を決めた段階で彼のご両親からなにか言われていただろう。だから、ここは言葉通りの認識で間違いないようだ。

「祖父母孝行もできるし、すごくよさそう」

「早速、準備を進めていこう」

 私がうなずくのを見届けて、光毅さんは車を発進させた。
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