黒き噂の辣腕社長は強がり契約妻に生涯愛を絶やさない
「私に大事にしたいものがあるように、宇和島さんにも守るべきものがあるはずですから」

 それは彼の下にいるたくさんの部下だったり、譲れない理想だったり。他人からは、現実的ではないと言われることもあるだろう。それは私だって同じだ。

 ただ、私と宇和島さんとでは抱えるものの規模がまったく違う。持っている力も違う。
 だからわかり合うのは難しい。宇和島リゾートが本気で力をふるったら、うちは吹き飛ばされてしまう程度のものだ。

 それでも私は、思いの強さだけは負けない。
 自分が感じるままそんな内容を伝えると、彼は前を見すえたまま目を見開いていた。

「反対派である依都さんからそんな言葉を聞くとは、正直なところ予想外でした」

 チラッと一瞬私に向けられた彼の視線は、今の言葉が彼の本音だと語っているように見える。

「私、うれしかったんですよ」

 隙を見せないようにと自身を戒めつつも、なんとなく気分がよくなり尋ねられていないのに話を続けた。

「宇和島リゾートの方は、私たちと対等な立場で話をしてくれました。それに、反対派の考えもひとり一人に耳を傾けていたし」

 説明会で主に話していた社員も、どうしたらいいのか困った顔を見せることはあっても、なんとか理解を得ようとしていた。その誠実な姿勢は、対立する立場にあっても好感を抱いた。

「計画通りに進まない部分に焦りや苛立ちもあるでしょうけど、でもそれを少しも私たちには向けなかった」

「できる限り円満な解決を目指しているので」

 彼の言い分に、自分もそう願っているとうなずく。
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