黒き噂の辣腕社長は強がり契約妻に生涯愛を絶やさない
 半信半疑になりながら、仕事を終えてから宇和島さんについてインターネットで調べてみた。
 出てくる情報の大半は、会社関係の難しい話ばかりだ。それでもSNSなどを根気強く見ていると、聞かされたような話が出てきた。

【故郷がなくなってしまった。宇和島の話にあのときは納得していたとはいえ、様変わりした田舎を目にするたびに苦しくなる】

 この書き込みだけではなんとも言い難い。一度は売り渡すと決めたものの、後になって後悔が押し寄せるなんてあり得る話だ。

【宇和島には人の心がないのか。採算が合わないとなれば、情け容赦なく切り捨てやがる】

 一段と恨みのこもる書き込みを見つけて、ギクリとする。
 大企業を率いる立場として、取捨選択は仕方がない話だ。
 逆にこれを書き込んだ人の立場だったら、人生を狂わせるような出来事だったのかもしれない。

【宇和島社長には人の心がない】

 理由こそわからないが、これだけで恨みつらみが伝わってくるようだ。

 それから数件、同じような書き込みを見つけた。

 詳細に書かれているわけでもないのに、攻撃的な言葉を見ているとどうしても宇和島さんが悪のように見えてしまう。
 なにかを切り捨てていくのは仕方がないと、私でも理解できる。でも、そのやり方は本当に両者が納得いくものだったのか。

 誠実で、穏やかな人。私は宇和島さんにそんな印象を抱いていたけれど、それは表向きの姿なのかもしれない。
 いかにも善人そうなあの態度は、住民の信頼を勝ち取るための手段なのか。
 
 一旦、落ち着こう。
 パソコンから離れて目を閉じる。

 脳裏に浮かんだあの人の穏やかな表情の裏には、いったいどんな感情が隠されていたのだろうか。想像しようとしても、なにも浮かんでこなかった。


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