黒き噂の辣腕社長は強がり契約妻に生涯愛を絶やさない
沸々とした思いを抱えていたある日。仕事上がりの祖母に呼ばれて、自宅の居間に顔を出した。
「宇和島社長が?」
「そうなの。明日の夜、依都にも同席してもらって話がしたいと」
市街地まで車で送ってもらったのは二週間ほど前になる。あれ以来直接的な接触なく、先日楢村さんといたところを見かけたのが最後だ。
いったいなんの用があるのかと、わずかに顔をしかめた。
普段は見せない宇和島社長の知らない一面を知ってしまい、私の胸中は複雑だ。どんな顔をして彼に会えばいいのか、よくわからない。
「おじいちゃんと話すんじゃないの? だって再開発の説得でしょ?」
「もちろん、あの人も呼ばれているけれど。依都もと言われる以上、用件はそれだけじゃないのかしら」
祖母も詳細は知らされていないようで、不思議そうに首を傾げた。
宇和島さんは、私が実家に戻ってくるより前から糸貫庵に足を運んでいるという。再開発に賛成するように説得するのではなくて、うちがなにに困っているのか、どんな不安があるのかと話を聞いていくのだという。
併せて糸貫庵の売りや利用する客の年齢層などについて尋ね、施設の視察も行っている。
今にして思えば、それらの言動にどんな思惑があったのかと疑ってしまう。
ただ、あちらが強引な態度をとったなど一度もないようだ。だからこそ祖父母も由奈も、彼の本性に微塵も気づいていない。
まだ確実だと言いきれない話を不用意にはできないと、宇和島さんの疑惑を明かせていない。
彼はここまで、ずいぶんと回りくどいやり方をしているように思う。それも、後々できる限り悪い噂が出ないようにするためには必要なのだろうか。
「宇和島社長が?」
「そうなの。明日の夜、依都にも同席してもらって話がしたいと」
市街地まで車で送ってもらったのは二週間ほど前になる。あれ以来直接的な接触なく、先日楢村さんといたところを見かけたのが最後だ。
いったいなんの用があるのかと、わずかに顔をしかめた。
普段は見せない宇和島社長の知らない一面を知ってしまい、私の胸中は複雑だ。どんな顔をして彼に会えばいいのか、よくわからない。
「おじいちゃんと話すんじゃないの? だって再開発の説得でしょ?」
「もちろん、あの人も呼ばれているけれど。依都もと言われる以上、用件はそれだけじゃないのかしら」
祖母も詳細は知らされていないようで、不思議そうに首を傾げた。
宇和島さんは、私が実家に戻ってくるより前から糸貫庵に足を運んでいるという。再開発に賛成するように説得するのではなくて、うちがなにに困っているのか、どんな不安があるのかと話を聞いていくのだという。
併せて糸貫庵の売りや利用する客の年齢層などについて尋ね、施設の視察も行っている。
今にして思えば、それらの言動にどんな思惑があったのかと疑ってしまう。
ただ、あちらが強引な態度をとったなど一度もないようだ。だからこそ祖父母も由奈も、彼の本性に微塵も気づいていない。
まだ確実だと言いきれない話を不用意にはできないと、宇和島さんの疑惑を明かせていない。
彼はここまで、ずいぶんと回りくどいやり方をしているように思う。それも、後々できる限り悪い噂が出ないようにするためには必要なのだろうか。