黒き噂の辣腕社長は強がり契約妻に生涯愛を絶やさない
 宇和島さんは現場に足しげく通い、反対派のネックになっている事柄を取りこぼすことなく拾い上げてきた。これはその成果なのだろう。反論の余地を、ひとつずつ埋められている。

「従業員についても、経営をうちのグループ会社が担えば再雇用の相談が可能です。ただし外国人観光客を取り込むという目的から、リニューアルオープンまでの間に必要最低限の語学を身につけ、研修に参加するなどの条件はつきますが」

「それは当然だろう」

 詳細はこれか詰めていくと話す彼に、わかっていると祖父が返す。

 この話に嘘やごまかしはないのかと、宇和島さんに視線を向ける。タイミングを同じくしてこちらを向いた彼は、大丈夫だとでもいうように微笑みながらうなずいた。

「宇和島社長がこちらへ来るたびに、最初の頃はまた来たのかと負担に感じていました」

「すみません。私はしつこい性分なので」

 苦笑しながら宇和島さんに、祖父も表情を崩す。
 ストレートな物言いをした祖父に対して、彼に気を悪くした様子は感じられない。 こういう気さくなやりとりができるくらいには、すでに祖父は心を許しているのだ。
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