黒き噂の辣腕社長は強がり契約妻に生涯愛を絶やさない
「だが、私たちの不安や懸念している点を根気よく聞いて回り、お互いがなんとか合意できる着地点を模索し続ける。そういうあなたの姿勢に、私も歩み寄れるところはないかと考えるようになっていきました」

 祖父の言葉に、隣に座る祖母もうなずいて同意した。

 仕事を辞めて戻ってきた私を、祖父はもう少しがんばってみようと受け入れてくれた。
 けれど本音では、このまま経営を続けるのは難しいとなにかしら決断をしていたのかもしれない。

 そもそも由奈の代に負債を残さないようにすると、祖父は最初に話していた。それは祖父の中でずっと考えてきたことで、そのあたりも宇和島さんに相談していたのかもしれない。この人を、すっかり信頼しきって。

「急な話だ。この場で返事をするのは、依都も難しいだろ?」

「う、うん」

 不意に祖父に話を振られて慌ててうなずく。

「結婚も糸貫庵のことも、少し考えさせてほしい」

「もちろんです」

 宇和島さんはいつまでも待つという雰囲気を醸しているが、さっきの説明では糸貫庵の件に関してはリミットが迫っていると口にしていた。返答するのに残された時間は、それほどないのだろう。
 乞われるままプライベートの連絡先を交換し、この場を解散した。
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