黒き噂の辣腕社長は強がり契約妻に生涯愛を絶やさない
 下車した駅でタクシーに乗り、あらかじめ彼に教えられていたお店の住所を告げた。

 しばらくしてやってきたのは、代官山(だいかんやま)にある一軒家のカフェレストランだ。

 家を早めに出てきたため、待ち合わせの時間のずいぶん前に着いてしまった。時間を潰す当てもないから先にお店に入り、やってきたスタッフに予約してある旨を伝える。

「さすがに、早すぎですよね。すみません」

「大丈夫ですよ。中でお待ちいただいてもかまいませんし、よろしければ少し寒いですが中庭の散策をされますか? 今だとカラーバリエーションが豊富なビオラや冬咲きのクレマチスが満開になっているんです」

 室内でじっと待っていても、余計に緊張するだけだ。スタッフの提案は気を紛らわせるのにちょうどよかった。

「中庭を、見てみたいです」

 行き先を変更して案内してもらう。ついでに、予約してあった個室の場所も把握しておいた。中に入るときにはスタッフを呼ぶように言われたが、聞けばすぐそこだ。わざわざ手間をかけさせるまでもない。

「ごゆっくりどうぞ」
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